midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「ポップ・アフリカ800」を読む。

最近amapiano関連の曲が面白くてよく聴くので、もう少しアフリカの音楽に対する解像度を上げて掘り下げてみようと思って読んでみた。すごく面白かった。長年欧米の音楽を中心に聴いてきた人間からすると新たな世界が広がっていく感覚が爽快だった。amapiano自体は南アフリカ発祥の音楽で、本書が発行されて以降に広まったので紹介はないのだが、その前身であるクワイトのアルバムは数枚紹介されており楽しく読めた。

著者は音楽と関係ない仕事をしていてリスナーということだが、情報の濃さが凄い。西洋的なポップスの世界や音楽理論にもある程度通じているのは勿論、アフリカ各国、各民族のアイデンティティや言語、宗教、歴史についても踏まえており、ディスクレビューでは聞いたこともない名前の楽器の演奏技術や歌い方について評価してたり、歌詞がどのような世界について歌われているのか紹介していたり、ほとんど研究者レベル。かと言って知識をひけらかしたい感じが全くなく、音楽オタクが熱量高めに早口で捲し立ててるような感じで良い。結構辛辣なことも書いており、「素人臭い歌い方」とか「このアルバム以降は特に聴くべきものはない」とか評価していたりするのも、専業ライターじゃないからか誰かに媚を売る感じもなくて笑える。著者は割と西洋的な音楽の文法に合わせたり西洋市場を意識した音楽を嫌ってる感じが随所に伺えるのだが、ものすごく共感できる。日本でも西洋音楽をどのように受容していくかという過程で色々と葛藤があった歴史があると思うが、日本風に「薄めた」表現とかセルアウトした感じにダサさを感じてしまう人間の側なので分かるのだ。

ただ、最近amapianoというジャンルに対する意識の高いaudiot 909氏が出したアルバムは素直に面白かったしカッコ良かった。氏もXでamapianoの受容の仕方について色々語っていたが、今後はamapianoに関するラジオをblock.fmで始めるみたいなのでそちらも聴いてみたい。


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