midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「AIプロジェクトマネージャのための機械学習工学」を読む。

最近はChatGPTの大流行を受けて社内でも既存のサービスやシステムにAI的な機能を追加できないか議論は上がっており、なんとなくAIのプロジェクトのマネージャになったらどんな形で仕事進めるかなというざっくりした気持ちで読んでみた。ほんとにタイトル通りの内容だし、今年出版されたばかりでタイムリーなのでプロジェクトマネージャに抜擢された的な人は一読しておくと良いと思う。思ったような精度の予測ができなくて関係者から白い目で見られたり社長から怒られたりとか、せっかく出だしは好調だったのにいざ導入してみたら人種差別的な判定をして炎上したりなどあらゆるプロジェクトの問題に対して予行練習になる。

本書はデータサイエンティストやデータエンジニア向けではないので、あまりガッツリとした統計学の話とかモデルの作り方みたいな話は出てこない。その代わりに、達成したい目標、要件定義の仕方とか品質管理方法、様々な関係者がそれぞれ独自の考えや希望、さらには予算を持つ中でどのようにプロジェクトを進めるかというすごく難しく泥臭いマネジメントの技法をなんとか図式化したりプロジェクト自体の先例を元に解説する内容となっている。普通の学術論文的な体裁なので結構堅めの文章だが、適当なバズワードでやたらと焚き付けようとするインフルエンサーが金稼ぎのために書いてみた的ないかがわしさも無いので誠実で読みやすい。出てくる社名やプロジェクトも日本の大企業中心で、豊富な研究開発費を元に試行錯誤しながらマネジメントしてたんだろうなという大変さが滲み出てる。クラウド環境としてAzure使ってるのもお堅い大企業っぽくてなんか微笑ましい。本書の中でデータドリフトやコンセプトドリフトといった概念の紹介がされるのだが、要するに予測分析をする中でインプットとなるデータの変質で予測が劣化したりそもそも課題自体が変わっていくみたいな事象が起きがちみたいな話があって胃が痛くなる思いがした。