「最後の秘境 東京藝大」を読む。
漫画版があまりに面白かったので原作も読んでみた。
漫画版で出てきたエピソードは原作をかなり忠実に再現しており、丁寧な作りだったんだなということを感じる。一方で、漫画ではどちらかというと学生がメインの描き方をしていたのと比較すると、原作では著者による考察がより深くて面白い。
・音校では教授は絶対。先生というよりも師匠に当たる。美校では遅刻が当たり前の世界だが、音校は厳しい。
・大きな楽器は持ち運びが大変。コントラバスは新幹線でも楽器用の席が必要になるくらい。
・ピアニストにとって指は商売道具。洗い物もしないし重いものも持たない。
・何浪もするのが当たり前の美校と違い、音校では浪人が少ない。演奏家は体力勝負なので、何浪もするより早めに別の学校に入って活動するパターンが多い。
・工夫は狙って行うだけでなく、本当に偶然生まれることもある。絵の具が勝手にやっている仕事を拾っているような感覚になることもある。
・小さい頃から親の勧めでヴァイオリンを弾いて藝大に合格し、間違いなく才能に溢れた学生が、「義務は果たした」と言って卒業してすっぱりヴァイオリンを辞めるエピソード。
・口笛は色んな音が出せる魅力に溢れた楽器?だが、欠点は音が小さい事。他の楽器と一緒に演奏すると聞こえなくなってしまう。
・彫刻や絵と違って、陶芸は最後まで作品と一緒にいられない。(竈で焼くため)
・楽譜は例えるならば芝居の台本のようなもの。書かれているセリフを棒読みしても芝居にはならない。
・楽器のための体。
・彫刻は美術品、工芸は実用品。
・彫金の学生は毎日貴金属の相場をチェックし、安い時に材料を仕入れる。
・見つけた音を覚えて、確実に出せるように何度も練習する。
・楽器別人間図鑑。ホルンの人はぼーっとしているらしい。トランペットはハキハキしてる。ファゴットはひょうきん。ヴァイオリンは気が強い。オルガンは真面目。コンバスは変人。
・楽器別あるある。ホルンなど管楽器系の人は口が商売道具のためリップが欠かせない。親知らずも抜けない。ファゴットは指の運動が欠かせない。声楽科ではのどあめが欠かせない。井口理は強制破笛丸というのを飲むらしい。
・声楽にマイクは要らない。マイクを使うシンガーを下にみる人もいる。
・オルガンは非常に古くからある楽器。オルガン奏者は考古学者に近い。
・バロック楽器はその後の数百年で進化した楽器よりも野生的な音が出せる。
・デザイン科は働くのが好きな人が多い。稼いで好きなものに使うことが仕事に繋がることもある。