midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか」を読む。

 タイトル通り、各国から称賛される台湾の対応がいかに優れていたか、またそのような対応がなぜ可能だったのかを分析した内容で面白かった。色んな理由が複合的に合わさっているのだが、コロナを検知した後の対応だけじゃなく、国の制度や文化、国民の意識のレベルに至るまで良い具合に機能したようで、他の国が簡単にマネできる状況ではなかったんだなというのは分かった。

以下が簡単な概要。

・国民の衛生観念が高い。しかもそれは日本統治時代に後藤新平という「国の仕事は広義の衛生である」と言った医師による衛生政策によって培われた要素が多分にある。
・若くて優秀な医師を抱える保健衛生部が機能し、未知の感染症に関する提言を政府の中枢に迅速にエスカレーション出来る基盤がある。
・「検疫」と「隔離」という基本的な対応を迅速に徹底的に行えた。
・国民の中にSARSの記憶がまだ新しく残っており、民主主義でありながら感染症に対する政府の強権的な施策に理解があった。
SARSの苦い経験を活かし、国家の方針としても疫学に力を入れて対応していた。また、政権中枢に医師出身の政治家が多く理解があった。
・長きにわたる中国本土との歴史的な確執があり、中国政府の発信するウィルスを過小評価しているようなニュースを当てにしていなかった。
・また、中国との因縁からWHOにも加入できておらず、終始中国寄りの対応を取り続けたWHOの発信するニュースも信頼していなかった。
・戦略物資ともなったマスクはほとんどを中国から輸入する形であったが、国家主導で瞬く間に国内に生産拠点を確立させて、国民だけではなく海外にもマスクがいきわたるように出来た。
・オードリー・タンのような天才的な大臣が、国民番号を基にしたマスクの供給アプリを作成し国民にマスクに行き届ける力となった。
・様々な情報が錯綜し世界中で「インフォデミック」となる中、政府主導でプッシュ型の透明性のある情報公開をしていた。日本では機関ごとに異なる数字を発表し、何が真実なのか判別できない状態となっていた。
・一方で、経済や金銭保障は他の国より遅れた部分もあったが、国民はカネよりまず命という感覚があったからか、それほどの抵抗がなかった。
・里長や村長と言われる町内会長のような人物が台湾の日常を下支えしており、感染者が出たとしても彼らが中心となってケアすることで大きな混乱を起こさずに対応することが出来た。