「チョンキンマンションのボスは知っている」を読む。
「その日暮らし」の人類学もエキサイティングで面白かった小川さやか氏。
本作はチョンキンマンションで(主に)中古車のブローカーとして中国とタンザニアをはじめとする各国の人間を繋げてビジネスをするボスの価値観や仕事ぶりについて迫った一冊。学術書という体裁でないので、エッセイ的で結構フランクな筆致が楽しめる。そして、ボスであるカラマって面白いなーと好感を持たせる。
以下、面白くてメモった部分。
・詐欺に遭った時にもっとも役立つ情報を教えてくれるのは、警察や弁護士ではなく詐欺師の友人。色んな人とのネットワークを作ることが大事。
・誰かの雇用者にはならず、独自でビジネスをする。
・アフリカと香港の双方を仲介して手数料、マージンを取る。アーサーガレージもそんな感じだったな。
・難民であるカラマは「友人」を手助けして多少の「お礼」をもらっているだけとなる。
・インフォーマルな送金業者の電子マネー口座を通じて個人ベースのクラウドファンディングを可能にする。
・カラマと著者の関係性。日々アップされる写真によって、顧客に現地妻がいることを匂わせる効果がある。
・香港のセックスワーカーである黒人女性の客は白人が多い。次に中東系、アジア人はあまり客にならない。
・カラマにとってパスポートは割と簡単に偽造できる。いざとなれば難民である自分のパスポートを作り直すことが出来る。
・著者はかつてタンザニアに在住していた時、近所からのお金の無心に悩んだ挙句、完全にお金を使い果たして、5か月間の逆に近所から完全にねだる側に回って生活した経験がある。意外と、人に頼る生き方というのは可能である。
・大海原にたくさんの釣り糸を垂らし、引っ掛かった魚でどんな料理にするかを決めるような生き方。
・今日のシェアリング経済はダメ人間を排除すした上でシェアが生まれるシェアだが、カラマ達のシェアリングビジネスであるTRUSTはダメ人間も包含し、人生を楽しむためにビジネスを手段とする。
・金儲けこそが社会をつくる遊びである。