midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「アルゴ」を観る。

面白かった。ベン・アフレックは本当に多才な人だね。イラン革命が起きた1979年のイランが舞台で、アメリカ大使館の人質職員を素性をばれさせずに国外に脱出させるため、「アルゴ」という架空のSF映画のスタッフになりきるという実話を元にした物語。このお話だけですでに劇的だし、何よりなりきる役を映画スタッフにしたという点も(実際は教師役や農業関係の専門家案も出ていたというが)映画素材としてうってつけだと思う。

とにかく、危機一髪の連続が続いて映画的な緊張感を持続させるのがうまい。例えるならば、周囲を欺いて緻密に作戦を練り上げて実行する忠臣蔵に近い緊張感。

映画スタッフになりきるために、革命後の浮足立った民衆たち(欧米人をクレーンに吊るして処刑したりしている)非常に危険な状態の中で街中に車で繰り出し、民衆に囲まれたり当局の人間に写真を撮られたりするも何とか逃げ切るシーンだったり。作戦決行の直前になって本国アメリカから中止の連絡が入るも、ベン・アフレックの独断で作戦を決行し、それを当時の大統領カーターに取り次いでGOサインを出させるまでの連携プレイだったり。メイドとして雇われた女性がその不信な客人たちをいぶかしながらも、取り調べに来たイラン革命派の人間には嘘を貫き通す場面だったり。手の込んでいかにも当時流行ってそうなSF映画の撮影用の台本を空港の検閲で紹介し、突破するシーン。何とか飛行機に乗った直後に革命派に正体がばれて、車で飛行機に追いつこうとするまでのシーン。すべてのシーンのハラハラ感が良い。これらのハラハラがスパイスとなって、離陸した飛行機にアナウンスが鳴った瞬間の安堵感をたっぷり味わうことができるのだ。

一歩も外に出れないままカナダ大使公邸にかくまわれ、明日のわが身も予測できない不安な日々を送る大使館職員たちの姿や、ベン・アフレックの寡黙で職人的な雰囲気がリアルでシリアスな暗い映画全体の雰囲気を醸し出していて良い。傑作。