midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「アイアンバディ」を読む。

 エンジニア的なお勧めマンガの上位に紹介されていた本作。面白かった!4巻できっちりまとまっていて作品としての完成度も高いが、もっと長期連載しても面白くなったと思う。エベレスト登山のパートナーになり得る二足歩行ロボットを作ろうと奮闘する青年と、その周囲のソフトウェアエンジニア、ベンチャーキャピタル、主人公と袂を分けて大企業でロボット産業全体の底上げを企画するライバルなど現代の日本のロボットに関連する色んな立場の人の物語。

後で紹介する予定だけど、「ハルロック」が生活の色んな場面を便利にするためにアイデアと形にするIot技術マンガの傑作だとしたら、本作はもっと制御工学(油圧とモータの違いとかトルクとか)や人型ロボットを制作する上での難しさ、果ては戦争技術(湾岸戦争は、現地に行かず画面ごしにゲーム感覚で人を殺戮して定時後に家族で食事が出来る戦争としてニンテンドーウォーと呼ばれていたらしい)や一企業によるロボット産業の囲い込みみたいなきな臭い話についても触れる骨太な技術マンガとなっている。以下メモ。

  • 二足歩行で倒れないロボットを作るために、骨盤を持たないロボットは中腰状態にして安定感を出す構造になっている。
  • 日本のロボット市場は、産業ロボット以外だとルンバ位しか利益が出ておらず、人型ロボットを作るためのハードルは技術だけでなく資金調達の面でもめちゃハードルが高い。ただ、社会はもちろん人間が操作する前提で作られている(階段を登る、ボタンを押す等)ので、人型ロボット自体の需要はある。
  • ロボットに正拳突きの動きを再現させるため、パンチの瞬間間接を固くするなど人間の動きを参考にする。
  • 極地開発ロボットは実現に必要な機能が多く色んな分野に横展開しやすいというインセンティブがあるので国や大企業でもチャレンジする風土がある。雪山を歩くというのは摩擦も低く雪庇やクレバスの見分け方等、人間でも高度な技術を要するので難易度がめちゃ高い。
  • ロボットの三要素、感じて(センサー)考えて(コンピュータ)動く(アクチュエータ)。感じて考えるという部分はプログラムで制御することになる。「歩く」という動作をするために、センサーを通じて路面状況を認識してどのルートを取るか考えさせて(学習させて)初めて歩ける。歩いてる最中も常にセンサーからのフィードバックを基に最適経路を計算しなおす。
  • ロボットが「走る」ためには上半身に生じる慣性の力を使って宙に浮いている時間もバランスを取って安定させる。
  • 軟骨の唐揚げは肉の残し具合などを調整できる鳥の抜骨ロボットが普及したおかげで安価に提供出来るようになった。
  • 「モラベックのパラドックス」名人に勝てるAIロボットを作るより、三歳児の動きをトレースする方が難易度が高い。
  • 人間とAIとの決定的な差は、連続的か離散的かという違い。AIはどんなに高度な技術で連続的に見せることが出来ても結局は離散的に世界を認識している。

以下、勉強になったサイト。

uematsublog.jugem.jp

 

後は、最近観て面白かった以下のロボット動画も貼ってみる。人類に反旗を翻す瞬間。


If Humanoid Robots Fight Back What'll Happen? Boston Dynamics: New Robots Now Fight Back