midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

ズートピア」を観る。

シンガポール行きのJAL便にて鑑賞。前評判通り、すごく面白かった。様々な種類の動物たちが「共生」するズートピアという架空の都市にて、それまで前例のなかった非力なウサギの女性であるジュディが幼いころからの夢である警察官になり、ズートピアの膿を抉り出していくというお話。

本作が(特にアメリカの)異なる文化を持つものの共生の難しさを、U12の子供でもわかるような(かつ、説教臭くないように)明確さとテンポの良さで描いていることは色んな評の通り明白であるんだが、一つ気になって、かつ根本的な物語の設定にかかわる部分としては、本作は「性」の描き方が足りないということ。確かに、人間であれば白人でも黒人でも黄色人種でも男女が交われば(今のところ)子供を作ることは可能だが、例えば本作の主人公であるウサギのジュディ(雌)とキツネのニック(雄)は子供を作れるのだろうか。いや、作れないのだろう。しかし、彼らは事件の捜索をつづけるうちに否応なくお互いの辛い過去や達成感を共有するほど惹かれあい、ニックからは「お前俺のこと好きだろ」という言葉まで飛び出すのだ。しかし、本作の見せ場でもあるジュディの記者会見場面での重要な証言である「草食動物」と「肉食動物」としての違いは明白であり、彼らはもともとは捕食者と非捕食者だったのである。アナロジーとして多民族国家であるアメリカを観ても、彼らは(地域によっても異なるだろうけど)色んな出自の人間が全てフラットに関係性を構築しているわけではなく、お互いがお互いに対する偏見を持ち、絶妙に距離を置きつつ「共生」している。本作でもうまいことそれは表現されているのだが、「草食動物」ジュディと「肉食動物」ニックのラブストーリーがうまくぼかされてしまったことはちょっと口惜しさを感じた(一応、いわゆるバディ的な関係にはなる)。ジュディがヒッピーのコミューン的な集団に取り調べに行くとき、象や山羊やら「他種」の裸の姿を見て赤面する、みたいな描写はあるんだけどね。

これは人間で言えば、鶏と人間との愛であったり、牛と人間との愛を描くという行為と同じなのである。

ただ、90分ちょいという尺でこれだけ楽しませてくれる本作はやはり驚愕。間延びする文芸的なクソ映画には見習ってほしいくらいだ。