midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「アシュラ」を観る。

これと「お嬢さん」を観たいがために有給取って新文芸坐にて。面白かった。どちらも超濃厚。本作は架空の市を舞台に、権力に固執する狡猾な詐欺師のような市長と、市長の汚れ仕事を知り失脚させようと超法規的に動く検察官と、その両者に弱みを握られた汚職警察官との凄まじい戦いを描く。韓国版アウトレイジと言われるのも(ある部分では)わかる気もする。

全てのアクションというか暴力描写が激しい。人間が人間を体重載せて本気で殴って滲み出る血とか、ナタで切りつけたりとか、銃で首を撃って吹き出す血とか、顔に押しつけるタバコとか、どうやって撮影してるのか不思議なくらいむちゃくちゃ痛そう。アウトレイジの暴力描写はある意味ファンタジーかと思うくらい突飛な暴力だけど(バッティングマシーンで球をぶつけたりとか)、本作は実直で痛そう。カーチェイスシーンもどうやって撮影してるのかわからないくらい、縦横無尽な角度で車内と車外の映像をシームレスに繋いで鬼気迫るシーンを作っており、俳優をやってる友人が「日本よりも韓国の方が映画作りの規制が少なくて面白い映像が撮れる」とか言ってたのを思い出す。

俳優さんが皆人間臭く、しかも皆体が大きいので威圧感もすごい。主人公のチョン・ウソン西島秀俊的な精悍なイケメンで板挟みの苦悩から投げやりに生きている。笑顔でコップを血まみれになりながらかじりつくすシーンは必見。弟分のチュ・ジフンは見るからにモデル出身だと分かるスマートな青年だが、うだつの上がらない警察時代からアルマーニのスーツを着て外車を乗り回す市長子飼いの悪党に落ちていく姿の変貌振りがとても良かった。そして何より市長役のファン・ジョンミンが最高。前に観た「新しい世界」でのヤクザ役と同様、一見すると笑顔が印象的な明朗快活な人間なのに、激しい暴力性と権力志向性を併せ持つふてぶてしい狂気っぷりが半端じゃなく面白い。ハンターハンターのパリストンっぽい感じ。最後の最後まで良心の呵責も見せない悪役ぶりは映画史に残るような名演だと思う。彼、ノーパンで兄弟分のヤクザにキレるというギャグシーンも披露している。事前情報は全くなく、「面白いらしい」という評判だけで観たけど、ラストシーンは度肝抜かれた。まさに惨劇というか。