midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「ラッキー」を観る。

人生において大きな影響を受けた作品として、「パリ・テキサス」があるが、主演であったハリー・ディーン・スタントンの遺作がこの作品。撮影当時はアラ90だったであろう彼だが、かくしゃくとした無骨でカッコいいアメリカ男を演じている。90分未満で短いけど、かなり鬼気迫るものがあった。物語としては、アメリカの田舎に住むアラ90で独身、子どももいない爺さんが、死を意識して自分の生活を観直す、というもの。物語中で割と重要な役回りをするリクガメの飼い主をデヴィッド・リンチが演じる。全編通して、サボテンが生い茂る砂漠を舞台に、いなたいギターやハーモニカのいい曲が響き渡り、50年代の映画を観てるような錯覚に襲われる。

グラン・トリノ」のイーストウッドもそうだったけど、爺いになっても男臭い減らず口を叩くというのはとても魅力的でカッコいい。毎日通う顔なじみのカフェでの店主との挨拶は「よう。ろくでなし(nothing)」だし、いい年してハリー・ディーン・スタントンは「クソ女(cunts)」とかダーティワードを履き捨てる。どうも、本人もそうだったらしい。若干残念ではあるが、高倉健を見るような、不器用で一途で、周りに呆れられようと自分の哲学を曲げない精神にグッとくる。「孤独と独りは一緒じゃない」という映画のタイトル通り、すごく建設的で現実的、かと言って移民や異なる考え方の人を教化しようとすることもない、保守的なおっさんの理想形のような姿を演じている。日本人としては、真珠湾攻撃沖縄戦の話も出てくるので注意して観て欲しいところ。個人的には、アメリカ側からするとそういう見方もあったんだなぁという印象。