midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「@DOMMUNE」を読む。

宇川直弘を初めて知ったのは電気グルーヴのMVを観てからだろうか。大学生頃には知っていたし、CDのレビューなんかでもビックリマークを多用して猛烈にテンションの高い文章を書いていて印象に残っていたけど、長文を読むのは意外と今回が初めて。物凄い博学ぶりと、徹底した現場主義(本書で語られるような、「いま」「ここ」を解体した新たな意味での「現場」である)ぶりに結構驚いた。全然ジャンルは違うのだが、多弁で有能でぶっ飛んだ感じは菊池成孔を彷彿とさせる。

本書は、おなじみのDOMMUNEにまつわるこれまでの本人による解説や、DOMMUNEに番組を持つ近しい関係者たちによるインタビューなどを収録した紙媒体として出した本である。DOMMUNEは絶対に有料コンテンツにしたくない、でも赤字なので紙媒体で少しでも補てんできれば、との願いで出されている。自分としては勿論今でもDOMMUNEの番組をたまに観てるし、DOMMUNEのスタジオにも行ったことあるし、本書でも取り上げられてる震災後のDOMMUNEのフェスにも行った。要するに色んな形でDOMMUNEを楽しんできたと思うのだが、本書を読んでDOMMUNEというメディアをこれだけコンセプチュアルに作りこんでるのか、と知って驚嘆した。リュミエール兄弟のシネマトグラフから始まる映像史を鑑みたDOMMUNEの位置づけだったり、アンディー・ウォーホルの個人のファクトリーに集まる人々を撮り続けた「スクリーン・テスト」のような自分を形作る人を撮り続けることによる「自分巡り」という宇川氏本人のパーソナルなパフォーマンス・アートでもある。コンテンツも含め、様々なレイヤーでの表現の複合体がDOMMUNEとなっており、その一つ一つの構造を明晰な頭脳でガチガチに語りつくせるという。「なんとなく新しいメディアをミックスして面白そうなもの作っちゃいました」的な曖昧さは一切無く、将来的には文化的アーカイブとして国会図書館に寄贈したいとかいう。

本書は丁寧に解説しているとは言え注釈がむちゃくちゃ多く、情報量が半端じゃないので胃もたれする恐れもあるけど、宇川氏の凄さを知るには十分な一冊ではないかと。