midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

網走番外地」を観る。

網走番外地 [DVD]

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勿論、高倉健さん追悼のため。65年作ということだが(50年近く前なのか…)、映像技法的には特に古さは感じない。構成もまとまっていて、冒頭の健さんやら田中邦衛やらの新人囚人が網走に汽車で降り立つところからさりげなくそれぞれの人物がどのような性格かを演出し、中だるみすることなくラストの脱獄までつなげている。所々に挿入される回想シーンと共に徐々に明らかになる主人公の生い立ちと思い、囚人たち同士のいさかいとその後の連帯は観る者を引き込む。クライマックスの脱獄後の手錠を壊すシーンの臨場感も、迫りくる列車とキャラの切羽詰まったアップのカットを短く交互に切り替えることで近年のアクション大作と比べても遜色ないハラハラ感を出すことに成功している。

若き高倉健はやはり実直で真面目で、作中で自分で語る通り「筋のとおらねえことが大っ嫌い」な好感のもてる男らしい男。加えて肉体鍛錬の成果もあり、風呂のシーンなどで時たま垣間見せる鍛えられた筋肉も(不自然な盛り上がった筋肉ではなく、あくまで自然な)見どころ。やはり、ちょっと存在感が違うというか、彼のような俳優でなければ成り立たないと思わせる素晴らしい仕事ぶりだ。改めて現在の俳優で、良くも悪くもそのような「強い存在感を放ちまくる俳優」がいるかというと、勉強不足もあるが比類する人があまり浮かばないような気がする。それこそ比較されているイーストウッドのようなね。本当に惜しい人を亡くしたものだけど、こうしてフィルムに焼き付いた雄姿をいつまでも堪能できるというのは、映画というメディアの素晴らしい長所だなと改めて感じる。