midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

日本沈没」さいとうプロ版を読む。

今年読んだ「SF超入門」でも紹介されていた日本沈没。意外と小松左京作品を通ってなかったなと思い読んでみた。前評判通り、面白かった。「」

小説版の出版が73年、高度経済成長期でイケイケな日本に対して冷や水ぶっかけるような内容だし、地質学などの科学と当時の世界情勢や地政学、日本の政治、文化・風俗、政治、宗教に至るまで膨大な知識と調査に支えられたであろう緻密で重厚で壮大な物語だった。

映画版も小説版も体験していないのだが、漫画版で読む限りは凄くエンターテイメント性としては地味な気がする。ハリウッドのディザスターものと違って物語の前半でいきなり事件は起きず、「日本が沈没するかもしれない」という夢物語的な可能性を科学的に凄く真っ当な調査をしたり、万一の可能性を考慮して政府で有識者による対策チームを作ったりするが、科学者や首相が大活躍したりする訳でもなく懐疑的ながら進んでいく様は凄くリアル。日本沈没という事態も漫画「ドラゴンヘッド」みたいにある日突然起きる訳ではないし、「シン・ゴジラ」みたいに急に都心が壊滅する訳でもなく、グラデーションでジワジワと日本が壊滅していく。ノアの方舟みたいに日本を脱出する人と国連指導のもとで受け入れ体制を世界で作っていくという描写もかわぐちかいじの「太陽の黙示録」をちゃんと思い出して面白かった。

総じて、シミュレーションの精度が高いので物語に夢中になれる。わかりやすい主人公や個々人のドラマに大きな焦点を当てずに、被害者の一例と言ったレベルで取り上げるのもドライかつSF的で良かった。