midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「マッドジャーマンズ」wお読む。

 

同時に数冊の読んだグラフィックノベルの中で一番面白かった。

著者がドイツ人でインタビュアーを担当し、ウガンダケニアで出会ったドイツ語を話す人々との交流を擬似的な3人にまとめたもの。

本書で取り上げられる若者たち3人は、いずれも若い頃に20代の多感な時期を1908年代の東ドイツで移民という形で生活している。自分の元職場や母国に対しては否定的な感情があっても、ドイツ自体に対してして否定的な言及はほとんどない。彼らは移り住む前に知的なエリート階層であったこともあるだろうが、ドイツ社会の中で限られた範囲ではあるが、ちゃんと出世したり成功したり素敵なパートナーと出会い、生活や家庭を共にできたりする。映画館や図書館に行ったり、ディスコで踊るみたいな体験は母国で出来なくて紆余曲折あってドイツを離れたものも良い思い出として描かれる。

面白かったのは、現代の国際社会ではほとんど受け入れ難い「資本主義はクソだ」みたいな発言。元々東ドイツで働いていた彼らは東西ドイツの統一によってさらに価値観の変化を迫られ、生活環境が劇変して荒れる人も出てくる。もちろん移民する前の彼らの価値観も元々違うし、ドイツで西洋的な生活を数年送るうちに価値観も変わるのだが、色んな軸がある中でそれぞれの移民たちが、アイデンティティに揺れながらも選択できるベストな生き方を選んで生きているというまとめかたになっていて面白かった。