midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「マタギ列伝」を読む。

マタギ列伝(下)-新装版 (中公文庫)

マタギ列伝(下)-新装版 (中公文庫)

 

 きっかけ忘れたけど、矢口高雄という漫画家はめちゃくちゃ画力を過小評価された作家、みたいな評をどっかで読んで、ネットで検索してみたら納得の画力だったので頭に残ってた。んで、図書館で見つけたから読んでみた。物語がこれから佳境、という時に打ち切りにあってしまい、全く伏線も何も回収しないまま終ってしまう作りになっているが、どうも続編を別で書いてるっぽいのでそっちも読んでみないと何とも評価できないかも。でも、「山賊ダイアリー」とか「ゴールデンカムイ」みたいなな生活風土の蘊蓄的な面白さもあって楽しめた。

連載されたのが1972年とかで(ちなみに劇中もリアルタイムで1972年っぽい)もう50年近く前なのでアクションシーンとかは古臭さがあるけど、動植物をはじめとして川や森などの緻密な自然描写が美しい。きちんとマタギに取材して、生活風俗やマタギ用語まで調べて丁寧に作り上げたのがうなずける世界観も楽しめる。絶妙に怪しい宗教的な考え方だったり(マタギには森の中で撃ってはいけない聖なる個体である動物がいて、撃ったらマタギの資格を失うとか)、熊より猿の方が高く売れた的な経済事情の話とかも初めて知った。

しかし、いくら山暮らしとは言え、電話もなくて連絡手段が鷹に結びつけた手紙とか、年に数回しか列車にのらないとか、ちょっと古すぎひん?みたいに思う描写もなくはない。一応この頃には一般家庭にテレビ・冷蔵庫・洗濯機も普及し始めてたはずだけど、電化製品を使ってる描写はまったくないし。戦後まもなく位の生活に見えてしまう。あと、自らの成し遂げたいことや意志がうすく、主人公である夫にけなげに尽くす典型的な良妻賢母的な女性の描き方も気色悪く見えてしまうが、まぁ実際に当時のマタギの価値観的にもそんなもんだったのかもしれない。