midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「FOUJITA」を観る。

FOUJITA (小栗康平コレクション 別巻)

FOUJITA (小栗康平コレクション 別巻)

 

 エコール・ド・パリの画家として著名なレオナール・フジタを描いた作品。オダギリジョー主演。めちゃくちゃ絵画的な画面構成のロングのショットが多くてため息ものの美しさだったんだが、映画としてはちょっと微妙な感じ。史実に沿った描写がされているだろうし、前半での、モンパルナスのキキやピカソが登場するパリの狂乱シーンでの雰囲気とか面白かったし、打って変わって日本での陰鬱な戦争中の生活風景や軍部の描写から幽玄な日本画の世界へとイマジネーションが広がるような描写とかもずっと固唾を飲んで観れたんだけど、物語というレベルで見ると何ともまとまりがない。

オダギリジョーの演じるフジタは、常にゆっくり落ち着いて話すんだが何だか達観した仙人のようで、創作や政治との関わりに苦悩したり決断する場面が少ないし、私生活でも富豪の家庭に生まれ育ち、恋多く5回も結婚した実績があるのにそっち方面にもあまりフォーカスが当たらない。物語よりも映像の力でずっと押され続けて、「え?これで終わり?」みたいな尻切れトンボなラストを迎えてしまった。波乱万丈な人生なのに本人が何事にも動じていないように見えてしまうし、無理にドラマチックにする必要はないかもしれないがあまりにも平坦な2時間だった。

長い生涯のうちどのエピソードをドラマにするかは勿論作り手の調理次第ではあるが、戦後日本を捨てて二度と祖国の土を踏まず、カトリックの洗礼を受けて壁画を描いた、という晩年に繋がるまでの描写が全く欠落しており、ラストシーンの唐突さが気になる。画面としてはナショナル・ジオグラフィック観てるみたいでめっちゃ美しくはあるんだけど。