midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「ハリーとトント」を観る。

出てくるキャラの8割くらいはおっさん、おばさんなので非常に絵は地味だが、しっとりと楽しめた。1970年代のアメリカを舞台に、住んでる家の立ち退きを迫られた72歳の老人と愛猫が、子供たちの住所やモーテルを転々としながらNYからロサンゼルスまでを横断するロードムービー。初恋の人に会ったり、ヒッピーのコミューンを目指して家出した女の子と出合ったり、ヨガや禅にはまって無言の行を貫く孫(これ、まんまリトル・ミス・サンシャインポール・ダノじゃん!と思いながら観てた)だったり、資本家を皮肉るポーランド移民の友人が出てきたり、仕事にありつくことのできないプエルトリコ移民の友人が出てきたり、その当時のアメリカの文化が垣間見れて興味深い。

劇中で実は愛猫タントのせいでハリーは何度か進路や交通手段の変更を余儀なくされるんだけど、それこそが人生なんだよなぁと感じさせる。バスでトントのトイレに困り、おろしてくれと嘆願して仕方なくハリーはボロイ中古車を買って道中を進む羽目になるんだけど、その車中でハリーはトントに話しかける。「若い頃、車で西まで横断してみたいと思った。でもその夢はかなわなかった。アニー(亡くなった嫁さん)に会ったからだ。でも、時間や仕事や家族のせいじゃない。その生活が満足だったんだ。」というセリフとかはミスチルの「HERO」の歌詞を思い出させてちょっと泣けてくる。家族や仕事をかなぐり捨てて夢を取る人もいるけど、夢よりも大切なものが出来て、それを守れる人って、それはそれで素晴らしいと思う。最初目指してた方向とは違う人生になるかもしれないけど、途中下車したり方向転換したりしてそれはそれで楽しむ。

ハリーが道中で出会う人々は、どこか影のある家族だけでなく胡散臭い人も含めて暖かく、それというのも誠実なハリーの人柄を映しているようで面白い。気まぐれなトントも可愛い。観た後にほっこりすることの出来る映画。