midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

ムッシュー・テスト (岩波文庫)

ムッシュー・テスト (岩波文庫)

なんか章を追うごとに「分かる」感がなくなって行った。テストさんって人はヴァレリー(作中の私)のある理想の状態にある人であって彼を様々な視点から描写した作品集ってことになるんだろうけど、やっぱ断片的な思考を記していったと思われる記録とかはすごく読みにくい。内向的で思考を研ぎ澄ます訓練をつみ、世界の全ての構成要素を理解し、それでいて雑事に煩わされず(生活の最低条件を満たす糧を株の売買で得る)、本すら読まず、認識の土台としての身体をいたわり、世界に自分の痕跡を残さないようにして死んでいく。後に奥さんがいることが分かるけど、彼女も夫の内面には近づけず、半ば完全なもの≒神を見るような書き方で夫を記している。最も賢いものは本当に世界に影響しないのだろうか。能力のある人たちにはこの世界をエンターテイメントさせる位の遊び心を持っていてほしんモンだなあ。

昨日は国立美術館ヴィルヘルム・ハンマースホイ展に行って来た。後姿の女性像に惹かれて友達といったんだけどすごく良かった。タッチ自体はものすごく細やかというわけではないんだけど、確かに言葉に直せば「静寂」といえるようなイメージを表現しているように思えた。彼の切り取る風景は彼自身の再構成が行き届いたものなんだけれども、人や家具の配置がちぐはぐでディスコミュニケーションというかそういう概念を表現しているようにも見えた。何度も繰り返し現れる妻のイーダのイメージは愛に溢れた人のイメージではなく、日ごろの観察の末、更に冷徹な目で切り取られた画面を作る素材として描かれてるように見える。部屋という箱庭的な縛りをつけて空間を二次元に表現しようとしてる点もなんか俺の好みに合う。その部屋に差し込む柔らかい光なんかは少し優しく感じた。前情報ほとんどない状態で行ったけどかなり満足度高かった。

んで夜は新橋付近のねぎしって焼肉屋でごはん。タレが効いててすごくおいしかった。麦飯もおかわり自由だし白米と違う味があって新鮮だった。2000円以内で生ビール飲めると考えれば結構お得な店かも。