midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「here」を読む。

実験的で面白い作品だった。絵とフキダシと時間の推移があるので「マンガ」というジャンルに収まるけど、思いついたコンセプトに合う表現がマンガだったという感じもある。著者のリチャード・マグワイア氏はliquid liquidのベースらしく、多方面で活躍していて凄すぎる。

発想はシンプルで「特定の場所を定点観測する」というものなんだが、時間軸をバラバラにすることで現実のアメリカの歴史をなぞってたり、違う時間で起きた共通の出来事を同じページで表したりして色々工夫があり、何度か読んで謎解きする感じで楽しめる。描かれるのは観測場所に住んでいた時代ごとの人々の家族が中心だが、人類の住んでいなさそうな超古代〜超未来まで行き来するので色々と想像力が飛躍して楽しい。特定の主人公はいないが、著者の家族写真から再現したり歴史上の人物が登場したりと「場所」を軸に語れる物語の断片を集めたコラージュとも言えるかもしれない。

こういう表現、他にもやっている作家もいなくもない気がするが、細かな描写が美しく、マンガ的な完成度が高いのも本作の特徴かもしれない。なんとなくクロノトリガーを思い出した。