midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」を読む。

 転職前の会社がモロに関わっていて、発売当初はベストセラーになった一冊だが、中身はそんなに濃くなかった。というより、ビジネスマン向けには良いかもしれないがエンジニア向けとしてはそれほどタメにならないという感じだろうか。著者が複数いるからしかたないかも知れないが、同じ用語の説明が章ごとに何度も繰り返されたり、用語に対する索引もないし、あまり本としての体裁は良くない。今年以降はブックオフの100円棚に並びそうな感じはある。ただ、その分ITに疎いビジネスマンでも2,3時間で読めるようなサクサクした構成になっていてそれは面白かった。

タイトルに偽りなく、2002年から2019年の足掛け19年にかけていかにみずほのシステム統合が大変だったかというルポとして楽しめる。読んでいて思ったのは、ホントにこんな案件に関わらなくてよかったという安心感だ。本書に登場する人物たちは職位が若くても次長・課長レベルだが、末端の兵隊たちであるかつての自分と同じ階級はもっと辛かったんだろうなと辛い気持ちになる描写も多かった。2011年の震災でシステム障害を起こした時、「担当者は一か月ほとんど家に帰れなかった」とか、マジで辛い。

本書に登場する技術的な用語も、正直言って発売当時の2019年からしても遅い。地銀では勘定系システムをクラウドに載せ替えた例も出てきたが、本書では「クラウド」の一文字も出てこない。せいぜい、「SOAで疏結合なシステムを作れて、一歩メガバンとしては有利だ!」という論調だが、このシステムを今後10年、20年守ろうという設計思想なら間違いなくメガバンクは終わる。メガバンクという重厚でプライドだけ高い産業がいらなくなる将来は目に見えてる。Finteck系の企業に勤める身としても、元の会社にいなくて良かった、と思えるほど活躍したいなと思った。