midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「音楽マンガガイドブック」を読む。

50年代、日本の漫画が産業としても文化としても映画的な手法を取り入れて発達し始めた時期から、音楽を扱った漫画を400点以上に渡って収録した資料的な価値の高い本。知ってる(知ってるけど嫌いで読もうと思えない本を含めて)、既に読んだことのある本は全体の25%位だろうか。細野晴臣坂本慎太郎大森靖子など、実際にバンドをやってる音楽人のお勧めマンガを掲載してたり、サブカル的な匂いは強いけど、初心者を排除するような空気はあまりないし読んでみたい作品もいくつか知ることが出来た。選書は著者が語るようにまさしく選盤的な構成となっており、ディスクレビューを読んでいるような仕立てになっているところもポイント高い。

また、音楽で言えばDJ MUROじゃないけど、人生の全ての生産的行為を音楽に捧げてる人と同じように、本書の評者は多かれ少なかれ漫画を紹介することで仕事としている人が多く、文章もしっかりしていて読み応えがあった。

特に勉強になったのはネット漫画。雑誌連載ならたまにコンビニに行ってパラパラとザッピングしてる過程で面白いマンガに出会える確率もあるけど、普段ネットでマンガディグをしない身としては、面白い音楽マンガに出会える隔離は皆無なわけで。観てみると、宅録マンガとか日常的なバンド風景とかいかにも現代的で共感できそうなマンガが多く連なられており、気になる作品は多かった。時代に合わせてマンガという表現形式の中で「音」という素材をどのように表現してきたかの変遷を追う論考など、読み応えのあるコラムも充実している。少女漫画の中で描かれる「ミュージシャン」像の変遷とかも下世話だけど面白い(大体がグラムロックやビジ

ュアル系ロックとくくられる人選で、ブラックミュージック界からはほぼゼロなのが悲しいけど)。

主に気になったマンガ

伊藤重夫「10月影ふみ」

滝沢解「炎のクイーン」

よしもとよしとも青い車

清田聡「染盛はまだか」

朔ユキ蔵「少女、ギターを弾く」

石原正数「ネムルバカ」

島田虎之介「ダニー・ボーイ」

さそうあきら「ミュジコフィリア」

感傷ベクトル「シアロア」

藤原カムイ「RECORD」

木下リオ「あじさいタウン」

ノッツ「ソラミちゃんの唄」

佐々木充彦「インターウォール」

見富拓哉「バンドをやってる友達」