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webエンジニアのメモ

「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」を読む。

日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

著者のことは経済小説を出してる人ということで知ったんだけど、元は宝島社の編集者らしい。そこいらに蔓延する、「株やFXで一山当てるには、儲けるには」をたまたまうまくいった成功者が自分の投資法を語ったような眉唾な胡散臭い本とは全く違い、「合理的な投資法」を初心者にも優しく、かつ丁寧に解説してくれる良本。タイトル通り、日本が破産して国債が暴落してハイパーインフレが起きるまでの過程を序破急の三部に分け、それぞれのフェーズでどんなポートフォリオを構成して防衛するかを描いたノンフィクション。

単にファイナンスに詳しいというだけではなく、「国家」や「暴力」の定義すら持ちだして語れる辺り、恐らくウェーバーを始めとする社会哲学分野の古典的な教養を持っており、非常に博学でかつ癖のない整った文書が書けるクレバーな人だなぁという印象。金利国債の関係やら、外貨預金する時の為替リスクの考え方とか、金への投資は実は投機なんじゃないかとか、FX始めとするデリバティブはリスキーすぎるとか、何となく知っていたことについても明快な図や筋道立てた説明のおかげで腑に落ちる感が凄かった。

冒頭で実際に国家破産を迎えた日本で働くサラリーマンの生活をさらりと小説風に描いており(スタバのコーヒー一杯が暴騰してたり、みたいな)、近未来SF的な楽しみ方すらできる。次は著者の小説「マネーロンダリング」か「タックスヘイブン」を読んでみたいな。