midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

ルイ・マルの「鬼火」を観る。

鬼火 [DVD]

鬼火 [DVD]

なかなか面白かった。アルコール中毒で病院にいた男が社会との繋がりを見つめ直し、結果自ら死に至るまでの48時間を描いた物語。

解説によると、裕福な家庭に育ったルイ・マル自身の「選ばなかった可能性としての」自伝の要素があるという。ありえた自分を喪に服したとでもいうのか。まぁそういう裏事情を知らんでも、十分本作は楽しめると思う。主人公はハンサムで元・社交的でお金持ちというナイスガイだったのだが、30歳という設定で(もっと老けて見えるが)自分の生を見つめ直す作業は共感できる点が多々あった。

主人公の男が感じたように、久々の友人にあって幻滅することはたまにある。一応それより尊敬できる面も見いだせるからまあなんとかトントンだけど、潔癖な人にとっては見過ごせない怠惰や妥協が溢れてるよなあ。人間はただ生きてるだけで素敵だなんて思えない。信念をもって、妥協せず、貫ける人こそ尊敬できる。遊びでも仕事でも、信仰でも、研究でも、創作でもなんでも。だから、主人公が周囲に抱く苛立ちがわかるのだ。そして彼自身の目の前にあるものに触れられない、手を伸ばせない臆病さも。痛い思いを厭わずに、貪欲に、研ぎ澄ませて生きていきたいものだ、と勝手に自分の人生訓にしてしまった。彼のように折れないように。

描写でいうと、彼が最後に手にした日本人形(?)みたいなやつが何か可愛くて印象的だった。あと、やはりパリの景色はどこを切り取っても味がある。