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webエンジニアのメモ

山形浩生の「新教養主義宣言」を読む。

新教養主義宣言

新教養主義宣言

語り口が冗談めかして柔らかいから学術書的な厳密さはないけど、ここに収められた社会のグランドデザインに関するスケッチ(90年代後半にかかれたものがほとんど)は現在になってもほとんどその有効性を失ってない(本人も文庫版後書きで述べているけど)。すごく面白い。民主主義に対する不信感は呉智英に通じるし(これも本書で述べられてるけど)、もやがかかっていた自分の社会に対する理解がすっと晴れていく感触があった。これは大学時代に真面目に社会学やっていた時の知的興奮と同じような体験だ。

やはり明晰な人間の視座と自分の視座を一緒に出来ないと痛感する。あまりに勉強不足で、著者に馬鹿にされる対象の筆頭になってしまっている気がする。「狂四郎2030」で読んだように、民主主義への不信感が自分の中で少し高まっている気がする。俺の投票権と、一定の社会・経済観念を身につけた人間の一票とでは実際に重みが違うし、そもそもすべての人間に政治を押し付けるのは難しいのかもしれない。本書では「投票権を売買して市場民主主義を導入せよ」というような主張をしているけども、自分を含めて政治感覚の薄い人間の判断によって衆愚政治に陥っている現状は否めない。政治意識の高い人物が数票投票し、感覚の薄い人間が投票権を売り渡して(責任・税金ともに軽減して)構築する社会が実際にどうなるかちょっと検討してみたい気にさせる。

他にもいろんな思考のスケッチが収められているけども、今後彼の言動をもっと注目していきたいと思った(時としてあまりに口汚い罵倒はあるけども)。読みたい本リストもSF小説含めて大分更新された。