midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

引き続き映画を見る。ダンサーインザダークの監督作ということで、結構長いんだけどあまり長さを感じさせなくてなかなか楽しめた。

とりあえず映画の作りが独特で、映画と演劇を足して2で割ったような感じ。俳優たちは何の仕切りもない家に住み、会話し、それをまた手持ちカメラというかふらふらしたカメラが追う。ただ、光の使い方が面白くて、夜と昼がはっきり分かるのは勿論、盲目のおっさんの開かずの窓を開いて夕焼けが飛び込んでくるシーンなどすごく表情のある豊かな光を演出していた。この辺自然光が印象的だったダンサーインザダーク的な作りとはかなり違う。これはこれでなかなか面白かった。

物語の方は、章ごとに分かれてて、周囲の人間の変革を志す人間が挫折する過程を描いたと乱暴にまとめられるだろうか。監督が何を伝えたくてこの作品を撮ったとかはとかはどうでもいいけど、とりあえず俺はこのドッグヴィルという村は世界中のどこにでもありふれた共同体だと思う。一人の理性的な人間が彼らと関係を築こうとするんだけど、結局失敗してしまう。でも、認めたくないがとても自然なあり方だ。

ただ、男女差別か知らんけどこれは主人公のニコール・キッドマンが美人過ぎるというのは大きいと思う。実際住民に「あんたは美人過ぎる」とか言われてたし。片田舎にあんな美人が来たら、もう否応なしに男どもは迫ってくるだろう。物語の途中までそういう流れがなくて不自然だったくらいだ。そして、共同体から人間扱いされなくなってからのニコールは悲惨だ。まさに性欲のはけ口でしかない。そして、住民たちはお互いの醜さに目を瞑りながら彼女を迫害していく。

ただ、最後の主人公の行動はどうなのかなーと思う。権力を持てばドッグヴィルのような弱者に暴力を加えることができるだろうけど、ニコールは傲慢なのだろうか。すごくニヒルで、人間に対して愛がない。このラストはダンサーインザダークにもつながるかも。

さかしま (河出文庫)

さかしま (河出文庫)

久々に読めた小説。面白かった!ちょっとエピソードが多すぎる感はあったけど、デ・ゼッサントが築き上げる人工的な楽園を堪能した。澁澤龍彦の訳もどこか格調があって良い。お金があったらこんな隠遁生活してー。

物語の始まりが既に「余生」なのが良い。これまでの人生をさっくりと紹介し、パリから離れた田舎で自分の好きなものだけに囲まれて生きていく。芸術を愛するデ・ゼッサントだが、自分では何も生み出さないし、批評という二次的な生産もしない。自分の趣味を共有する仲間もいない。好きなものを規則正しく並べ、味わい、人生のエントロピーを極力抑えて生きる。この作品が書かれた時代背景や作者のユイスマンスの文壇での立場を考えるとすごく異端だったんだろーなと思う。とにかく久々に小説の面白さを味わえた。あまり劇的なことのないお話だけど。

とくに気に入ったのは香りを楽しむデ・ゼッサント。俺も常々気になってたんだけど、匂いを組み合わせて音楽のように時間軸を持たせて匂いの秩序を作るような芸術やってる人いないのかなーと思ったけど、どうやらいるらしいね。面白い匂いを表現するだけでも楽しそうだし、それを変化させて曲のようにメロディーをつけたり反復させたりとかするとすごく広がりのあるアートだ。

そーいうデモンストレーションないかなー。