midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

gyaoでやってたので「ナインハーフ」観てみた。

ナインハーフ[DVD]

ナインハーフ[DVD]

いやーこれは傑作だな。こんな面白いと思わなかった。86年、俺が生まれた年の映画らしい。音楽も曲名は分からないけどディーボとかかかってるらしく、チキチキしたチープなドラムマシンやシンセ音からイケイケなNYのバブリーな雰囲気が感じられて良い。主人公はゴードン・ゲッコウよろしく金融業で一発当てた、自信たっぷりのスケこまし成金イケメン野郎で、全盛期のミッキー・ロークがこれでもかってくらいハマってる。というか、この映画はミッキー・ロークで成り立ってるという感じ。共演のキム・ベイシンガーは特に美人だとは思わないけど、時代を感じさせるソバージュっぽい金髪にだるっとした大きめのニットとか着てる感じはやっぱ80年代感がすごくて面白い。この二人が織り成す、「ラストタンゴ・イン・パリ」的な濃密なセックス三昧の生活を、「フラッシュ・ダンス」のエイドリアン・ライン監督による万華鏡のような映像体験で楽しむ2時間。

とりあえず、セックスシーンはどれも面白い。印象的なセックスシーンを撮るためにどんな舞台や状況を作り出そう、という逆算で制作してるんじゃないかと思わせる。だって、セックスシーンになるとBGMも変わって明らかにライトのあて方とかカメラワークとか劇的になって、映画の中でスイッチオンした!っていうのが明確にわかるんだもの。やってること自体は冷静に観るとアホっぽいんだけど、どれも印象に残るし、マネしたくなることも多い(笑)。氷を使ったアレとか、蜂蜜を使ったアレとか、変な地下の水道が漏れ出た野外の階段でのアレとか。キム・ベイシンガーがプロジェクターに映る絵画をシャッフルしながら自分でアレするシーンとかも、そこだけ切り出してもすごく美しい。

そういう描写としてもすごく面白いんだけど、意外とストーリーも良いのだ。とても普遍的な男と女のスレ違い方を描いていて面白い。「ナインハーフ」というタイトル自体、男女の仲は9週間半くらいで一区切りして、一旦イチャイチャ期を抜けても尚付き合うか、すれ違いが大きくなって分かれるかの選択肢になりがち、という意味らしい。すごくリアル。映画のラストでミッキー・ローク、さんざん相手を弄んでおいて愛想をつかされてから、急にしおらしくなって懺悔する様が人間臭くていい。でも、その時点ってもう取り戻せない地点なんだろうなぁ。頭でうすうすわかっていたとしても、多分実際に相手と対峙すると今までと同じようにしか振る舞えないし、その結果失わないと大切なものに気づけない、という。なかなか教訓になりました。