midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

そして父になる」を観る。

面白かった。カンヌで賞を取ったとか観た人の評判とか色々期待値高い中で見たけど、期待を裏切られず。是枝監督だったことも知らずに観たけど、言われてみるとうなずけるものがある。出産間もない子供の取り違えにより本来会うこともなかった二つの対極的な家族が交流し、福山雅治演じる主人公であるエリートサラリーマンの父が「父になる」映画。

「誰も知らない」に通じるような生活の匂いが漂う描写が多く、二つの家族の生活の対比がすごくうまい。例えば、取り違えられたもう一方の家族の父は、リリーフランキー演じる冴えない町の電器屋のオヤジなんだが、彼はいい年こいてストロー付のジュースを飲むとそれをガジガジ噛む癖がある。そして、彼の息子(実際は福山雅治の息子)もその品のない癖を受け継いでおり、それを観たときの福山雅治の嫌悪感あふれる表情とかがすごく良い。こういう小さいエピソード一つでリリーフランキーの家族がどういう生活しているか、その人柄がすごく伝わるし、それに対する福山の表情もわかりやすくてハラハラする。真木よう子演じるリリーの妻も、美人だけど子だくさんのヤンママ感が出ており、雑なタバコの吸い方とかも堂に入っていて素晴らしい。逆に、チリ一つなさそうな都内の高級高層マンションに住む福山家族の生活もリアルだ。仕事が忙しくて家でもIPADを離さない福山と、仕事そっちのけで全力で子供たちと遊びまわり、一緒に風呂に入り、凧揚げをし、キャンプに連れていくリリーの対比。「子供との関係は一緒に過ごす時間だよ」というリリーに対する「時間だけじゃないでしょう」と返す福山。どちらも間違ってはいないのだが、子供は正直なもので、一緒に泣き笑いできるリリーの方に次第に懐いてしまう(ように見える)。

優秀であるが、独善的な福山雅治は強引に二人の子供たちの親権を金で買おうとしたり、交換生活を始めた実の息子にも厳しく躾をしていこうとするが、うまくいかない。でも、そんな父のことをきちんと息子(実際はリリーの息子)は観ており、福山の方が懐柔して子供との接し方を変えていく、というラスト。この手のお話は、「最強のふたり」よろしく社会的な地位の低い人間の人柄に地位の高い人間が感化されるケースが多く、本作もそれに当てはまることは確かだけど、意外と先の読めない展開でハラハラをきちんと持続させてるのが良い。現実的に考えれば物語後も二つの家族は様々な困難を乗り越えていかなければならないが、それを束の間でも忘れさせるようなラストシーンのほっこりした感じは少しの救いがあってよかった。