midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「フューリー」を観る。

面白いと同時に不思議な映画だった。現存する数少ない第二次世界大戦時の実際の戦車「ティーガー」を使用したことで話題になったタンクムービー。監督は「エンド・オブ・ウォッチ」も良かったデヴィッド・エアー。ブラピ主演。聖書を暗記する信心深い役としてシャイア・ラブーフや、ちょっと前に「ウォールフラワー」で観た弱そうな少年ローガン・ラーマンも登場する。

ミリオタや専門家から見てもかなり戦車戦をリアルに描いているらしく、残虐なシーンや死体描写も多いので、一見すると「プライベート・ライアン」に近い印象はある。そういうディテールは確かに観ものなんだけど、個人的には「情報の遮断された現場」観こそリアルに感じた。戦車にはブラピを父親のようにして長年戦ってきた仲間が(途中で新人ローガン・ラーマンを追加して)5人いるんだが、彼らの個人的な経歴は劇中を通して説明がされない。互いに命を預けて戦う仲間なのにこんな断片的な情報に基づいて仕事するのか、というのが何とも戦争のリアルさを出しているように感じた。例えばブラピはドイツ語が堪能でドイツ人ともコミュニケーションが取れるんだが、なぜ話せるのかは劇中でわからないままである。シャイア・ラブーフもなぜ聖書を読むのかわからないし、ローガン・ラーマンがなぜピアノを弾けるのかも分からない。わからないまま、目の前の敵を殺していかないといけない。そして仲間同士であえて聞いたりもしない。彼らは頼りになる仲間である一方で、ブラピも含めて全員が殺人を犯し、平然とドイツ領にいる女性を犯す「戦時中としてはいたって普通の」軍人であり、そういう点も怖いくらいにリアルである。ローガン・ラーマンも、最初は捕虜を殺せず、代わりに自分を殺してくれとブラピに哀願するような人間だったのに、最後には絶叫しながらSS隊をバズーカで撃ちまくるような狂気に触れていく。彼らには戦争の大局はある程度共有出来ていても、死と隣り合わせの空間で生き残るための適切な判断ができず、自滅してしまうように見えて哀しかった。

あと、ブラピが上半身裸になるシーンがあるんだが、現在に至るまで素晴らしい筋肉をしており、モヒカンにした髪型も精悍で素晴らしくかっこよかった。