midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「光のノスタルジア」を観る。

 「真珠のボタン」が素晴らしかったパトリシオ・グスマン監督のドキュメンタリー。衛星写真を観てもはっきりと分かる位、雲が薄くて天文観測点として世界随一の環境である一方、独裁政権下で行方不明になった政治犯たちの遺骨が埋まるチリのアタカマ砂漠を取材した作品。めちゃくちゃ美しい星屑の映像や拷問で殺されたチリ国民の惨たらしい遺体の映像が交錯し、静かなナレーションで淡々と語る演出でずっと惹きつけられる。

ただ、映画のテーマとしてはちょっと微妙だったかも。天体観測と独裁政権の反省を類推させて、どちらも過去を調査する旅、というような言い方をするのだが、あまり比較対象として適切でない気がする。自然科学の研究と人間の行った政治の反省は同じレベルですべきじゃない。

観ていて気になったのは、政治犯の遺骨を何十年も探し続ける壮年の女性たち。残念ながら亡くなっていることはほぼ確定しているのに、何としても形として遺骨を探し求め、遺骨が見つかれば次の日に死んでも構わないと話す姿に、人間にとって遺骨の持つ意味の重さが文化圏の違いを超えて伝わってきた。自分が死んだときに骨ってどんな扱いになるんだろうか?火葬か土葬か海中に巻かれるかそれも分からないけど、自分の骨で気持ちを保てる家族を持つことが出来たら幸せだろうな、と思う。