midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

ナイトクローラー」を観る。

なるほど、こりゃ面白いわ。皆が絶賛してたのも納得の出来。現代アメリカはL.A.を舞台に、コソ泥をして生計を立てていた孤独な男がひょんなことからパパラッチ稼業に興味を持ち、出世していくさまを描いた物語。ギョロギョロした目で爬虫類的な不気味さを持つ主人公をジェイク・ギレンホールが怪演している。ある意味バットマンのジョーカーとかハンイバルのレクター博士みたいなアイコンになり得る存在感のあるキャラだった。ナイトクローラーはパパラッチという意味らしい。

主人公が、異様に真面目で建設的な思考を持ちながら倫理観が欠けているのが面白い。要はサイコパスなんだけど、手順やコンプライアンスに違反してでも社会に求められるサービスを提供し、成功を収めていくところがミソ。言ってみればワタミの社長みたいなイメージで、対顧客には安くて上手いサービスを提供出来てるんだけど、本人的によかれと思ってやっている仕事や従業員への対応が超絶ブラックで労働基準法なんか知ったこっちゃないしという感じ。本作の主人公も取りたい映像を取るためにスピード違反やら犯行現場の改竄やら警察への情報隠ぺいやら商売敵の間接的な殺人なんかの犯罪を全く意に介さず実行するし(まぁ、もともとコソ泥で生活してたし)、それでいて毎日几帳面に部屋の植物に水やりをして、ネットできちんと経営者としての心構えやクライアントの財務情報なんかを勉強し、日々成功しようと努力しているのだ。早口でまくしたてるような話し方や薄気味悪い笑顔なんかもサイコパス系の経営者っぽい。

そして、決して高尚なジャーナリズムに目覚めたりせず、ある意味バカな大衆にしか受けない低俗で煽情的な映像のみを売るというのも薄利多売で儲けようとするブラック企業にありがちな戦略だし、めちゃリアルなのだ。

さらに、こういう悪役たちって最終的に失敗して「犯罪なんてするもんじゃないよね」的な終わりをすることが常だと思うんだけど、本作では一度も失敗することなくただただ事業を拡大してクライアントにも高圧・支配的になって成功していく姿を描いて終わるという衝撃のラストとなっている。この憎らしさ、最高!