midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「新しい自然学: 非線形科学の可能性」を読む。

新書なんでそんなに長い本ではないんだけど、何度か中断してしまい読了まですごく時間がかかってしまった。研究書でもないので初心者でも楽しく読める。科学の営みによって人間が世界の仕組みについて知ることの出来ている領域って実はすごくいびつなんじゃないか、という疑問に対して非線形科学というこれまでの科学が分析していた手法とちょっと違う科学の可能性を考えてみない?という内容。

とかく現代は原子力も発明し月にも到達できるし世界の真裏までネットで一瞬でつなげられるし、みたいな「科学技術だけが無暗に発達し、人間は進化し過ぎた」感を一般人は持ちがちだけど、ホタルたちの明滅が揃う同期現象みたいな凄く身近な事象ですら科学で満足に説明できてないんだよ、という諭しから入る。そして、基本的に科学の自然に対するアプローチは出来るだけ「部分」を切り出して、限定的な性質について分析し証明してきたけど、根源的に言ったら「部分自体の性質として全体から捉えた上の性質を含んでるので、部分だけ切りだしても本質を捉えることなんか出来なくねぇ?」的に従来のアプローチに対して疑問を投げかける。こういった指摘ってSF作品を読むときの感覚に近くて、自分の立っている常識や知覚に日々がハイある感じがして面白い。なるほど、世界ってこういう観方が出来るのか、という。本書は難しい数式も使わず、図解も多くてとても親切で読みやすく、著者の科学者として誠実な人柄が伝わる良書。科学哲学とかに興味がある人にはとてもお勧めできる一冊。