midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「ブレイブ」を観る。

ブレイブ [DVD]

ブレイブ [DVD]

なんか酷評されてるみたいだけど、アメリカ郊外の貧困生活という自分好みの世界感であることを差し引いても面白いじゃないですか。意識高いジョニデが監督・主演・脚本を手掛け、自分の出自であるネイティブアメリカの文化に光を当てた暗い映画。全然ストーリーは違うんだけど、暗い青年の独りよがりな行動を描く点や全体の空気感が「バッファロー66」に近い。自己犠牲という点だと「ダンサー・イン・ザ・ダーク」も近いかも。撮り方や友情出演(マーロン・ブランドとかイギーポップとかいう豪華さ)とかいう点で金かかってなさそうだが、映画としての話のバランスはある意味商業的で良くまとまってると思う。中西部のゴミ捨て場近くに不法占拠して暮らす無職の貧しいネイティブアメリカンの青年(家族持ち)が、自分の命と引き換えに5万ドルを手にし、家族を救おうとするというお話。

一番印象的なのが、大金を手にした後の青年の行動。貧困とはまさにこれ、という展開なのだが、「明日以降に生かす使い方」が出来ないんだよね。なぜなら構築的な人生を送ってこなかったから、そういう金の使い方を知らないし想像もできない。子供を喜ばすために無駄なおもちゃを買い与えるんじゃなく、例えその時点の子供に反対されても(実際、劇中で「自分の家を出たくない」と息子に言われる)十年後に高度な職につけるような教育機会や本を与えること(金を得る方法を教えること)が本当の意味で子供のためになるんだけど、そういう選択ができない。息子には成功してほしい、そして教育が必要ということは分かってはいるんだけど、それが具体的にどんなものかがわかっていないという。だから町のスーパーに繰り出して無駄なジャンクフードを山ほど買ってみたり、スーパーのカートに息子をのっけてはしゃいじゃって店員に怒られたりしてしまう。だって、青年自身健康な体を持ってるし、英語を話すことが出来るというスキルを活かして真面目に仕事を得ることだって不可能じゃないはずなのだ。なのに彼は自身の命を投げ出して大金を得るという愚かな選択肢を選んでしまう。この発想の貧困が観ていて辛いし、でも彼が一生懸命家族のために考えた結論だと思うと切なくなるのだ。家族のために命を捨てることはブレイブ(勇敢)なのだろうか。青年の父から清めの儀式のようなものを受けるシーンを始め、死を意識した青年の表情や、マジックアワーの乾いたアメリカの大地の描写など映像は全て叙情的で美しいのだが、やるせなさの残る面白い映画だった。