midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

ハマのメリーJさん」を読む。

少なからず著者には前から興味持っていたのだが、切実に読みたいというタイミングもなく今日まで来ていたが、著者がNYに数年住んでた、とかいうエピソードに共感を覚えて読んでみた。2000年代初頭から2005年くらいまで雑誌「bmr」上に連載していたブラックミュージック(特にウエッサイ要素強め)に関する四コマ漫画を、著者の死後単行本にまとめたもの。

後追いの自分にとっては、中尊寺ゆつこという人はバブル期に一山あてた漫画家さん、というより、ヒップホップ好きの文化人みたいな印象が強かった。けど、本作を読んでだいぶその印象は変わった。本作自体はほとんど当時流行りのヒップホップやR&Bネタが多いけど、本人はもともと90年代前半のNYハウスから入ってること(作中にもmasters at workなんていう名前が出てくる)とか、新車のベンツに乗るほどの金を持ってたり(実際、旦那さんの小林雅明氏と故人の遺族といろいろ諍いはあったらしい)、かなりバブルを謳歌した人だったらしい。連載の内容自体は、正直著者の周囲の人間の認知度とか、さらに著者自身のバックボーンを知らないと「何かありきたりなダジャレの四コマ多いな」くらいなクオリティなんだけど、当時の編集部と著者とのメールなんかのやり取りを紹介しており、そういう背景を含めて読むとかなり面白い。死の数日前の最後の連載号まできちんとやり遂げた著者の仕事ぶりに涙。

特に、Kダブ氏と宇多丸氏と夫の小林雅明氏の巻末の対談は日本のヒップホップが躍進していく時期に、彼女が興味の赴くままにどんな活動をしていたかが知れて面白い。彼女がラジオの時間帯を買い取って採算度外視で手掛けたnight flightはyou tubuにもいくつか音源が転がっていて、当時としてはすごく画期的だったみたいだ。聴いてみたけど非常にナイスなので日本のラップ好きは是非聴いてみてほしい。

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