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webエンジニアのメモ

黒い十人の女」を観る。

黒い十人の女 [DVD]

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映像は綺麗だけど、映画としては微妙な出来だった。船越英二主演の市川崑監督。テレビ局に勤めるイケメン浮気男に対して、妻を含む愛人たち10人が結託して殺す計画を立てる話。

船越英二は和製マルチェロ・マストロヤンニと呼ばれてるみたいだが、そのエロい顔つきを生かした表情などが言い得て妙な素晴らしい仕事ぶり。どこまで本気なんだかわからない、華やかな世界に生きる口から出まかせ軽薄男をすごくリアルに演じている。妻に対して弁明する「傘を忘れたらある女が貸してくれたり、また別の女については撮影が遅れたから喫茶店に連れていったりしただけで、僕は自然にしてるといつのまにか女と深い仲になってしまうんだ」的な発言も半分本当で半分嘘なんだろうなというか。「誰に対しても優しいというのは誰にも優しくない」と劇中では評されており、適格だなーと。仕事に対しては絶妙に真面目で、実は凄く頼りない(終盤では何もかも取り上げられておいおいと泣いてたりする)というのもモテそうだなーと感じる。また、どこか残酷な妻役の山本富士子や若き中村玉緒のチャキチャキしたモダンなアイドルっぽい振る舞い始め、女優陣もいい演技していると思う。

という感じで役者はいいんだけど、お話としてはちょっと消化不足。まず基本として、女10人出すなら「オーシャンズイレブン」みたいにそれぞれに見せ場や個性を出してほしいよなーと思う。見せ場があるのは5人位で、後は烏合の衆という感じで、ストーリー上10人である必要が全くない。だから、肝心な女たちの愛憎きわまって殺意に昇華するまでの描写が薄く感じた。ここをうまく描ければ傑作になったと思うんだけどなぁ。