midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

シルビアのいる街で」を観る。

シルビアのいる街で [DVD]

シルビアのいる街で [DVD]

あのビクトル・エリセ蓮見重彦が絶賛してたという評判と、主人公の男女二人がとんでもなく美形なので興味持って見てみた。感想としては、評価しづらい。つまらないと言えばつまらないんだけど、面白いっちゃ面白い。町全体がむしろ主役と言ってもいい位美しいストラスブールを舞台に、一人の青年が昔会ったことがある女性を求めて探し回り、それっぽい人を見つけたらストーカーし、人違いだったというお話。というか物語はあってないようなものというか、どちらかというとTVの「世界の車窓から」とか「世界遺産」を90分に拡大してみましたみたいな感じ。セリフはほとんどないし、主人公が名前も含めてどんな経歴の人間かわからないし、主人公が追い求める女性との関係性すら不明確なまま映画は終わる。ぼーっと眺めながら変わりゆく景色を楽しむ感じに近い。

冒頭のシーンからしてかなり挑戦的。主人公がホテルのベッドから起き上がって外に出るまでの間で物語映画では考えられないほどの尺を取る。何しろ、主人公が歩き過ぎ去った後の景色までずーっと長回しで撮っているのだ。観客は通常、そういう時はまだ何か物語を駆動させる出来事が画面の中で展開されるのだろうという期待を持つと思うが、通行人がただ通り過ぎるだけで特に何事もなくシーンは切り替わる。全編通してそんな感じで、特に意味のない通行人(特に、「ベルト安いよ」とか何度も絡んでくる物売りの兄ちゃんが間抜けで面白い)や電車にフォーカスを当てるシーンが多いので、退屈に感じる人はむちゃくちゃ退屈に感じるだろうし、綺麗だなーと思える人はそれなりに楽しめる。特に、主人公の男性がスケッチするために眺めているカフェの女性たちの自然な笑顔は美しい。ただ、すごくフェティッシュな内容なのに、映像技法は全然凝った感じがしないというか、脱力しすぎな気がするんだよなぁ。例えば「オンリー・ゴッド」とかは美しい部屋や空間(まぁ、娼婦小屋とかボクシングジムとかカラオケスタジオとかが舞台だからある意味猥雑なんだけど)を青を基調としたシンメトリーな画面で撮ったり、おごそかな感じがそこはかとなく伝わる神秘的な映像になっていたもんだけど、本作ではそういう映像的なこだわりがあまり感じられなかったのが残念。

ただ、前述のとおり、主人公の男女二人は目を見張るような、ため息の出るような美しさである。男性はどちらかというと情けない役だが、風にたなびく少し長い茶色の髪、蒼い瞳に細く突き出した鼻と薄い唇にたたえる哀愁ある表情。その顔を眺めてるだけでもイケメン好きな方は元を取れるかもしれない。