midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

フランソワ・スクイテン「闇の国々Ⅱ」を読む。

面白いんだけど、ちょっと評価が難しい。「闇の国々」を巡るいつくかのエピソードを寓話的に描かれる作りなんだけど、壮大すぎて「何かよくわからんけどとにかく凄い」みたいな感想になってしまう。本書はシリーズの2番目みたいだし、他のシリーズも恐らく断片的なエピソードを散りばめて、最終的に闇の国々に関する全体像が浮かび上がるんだろうと思うけど、本書だけではちょっと足りない。ここのエピソードも単体として楽しめるけど、恐らく他のエピソードとの繋がりが散りばめられてて、点と点が繋ぎあって線になるような形で楽しむというのが本筋な気がする。全体像の説明を極力排しているハードSFものという点で弐瓶勉の「BLAME!」に近い感触を受けた。「BLAME!」も画力はスゴイが、「闇の国々」は半端じゃない。1ページに一週間かかるという緻密な書き込みとカラーは全てスクイテンひとりで行っているらしく、構図や演出能力も高すぎて一枚絵として眺めるだけでも十分楽しめる。特に近代ヨーロッパの「どこかのようでどこでもない」のような背景や建物、小道具は見るだけでワクワクする。が、その分感じたのはテンポの遅さと、絵の動きの少なさ。日本漫画の優れた点として、集中線や効果線による動きの演出、細かく大小の差が大きい大胆なコマ割りなどがあると思うが、本書ではそういった漫画に慣れていると「読みにくく」感じると思う。コマの中でのセリフも多く、目を引くようなコマ割りやページを繰る手が止まらないような緊張感はない。「BLAME!」は世界観の見せ方の仕方もうまいけど、アクションシーンもすごいしね。勿論スタイルは違うしそれはそれ、これはこれで楽しいのだが。