midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

吉田豪サブカルスーパースター欝伝」を読む。

サブカル・スーパースター鬱伝

サブカル・スーパースター鬱伝

読みたかった一冊。内容はもちろん面白くて、人それぞれ欝になる理由や対処法は異なるんだけど、リリー・フランキーの言う「20代より40代の方が惑ってる」という言葉に紹介されるように、本書の登場人物たちは40代を過ぎても惑い逡巡し、痛みを伴いながら欝を昇華している。

俺には、しかし彼らは20代のうちからエネルギーのない、保守的で保身しか考えない友人たちより遥かに人間的で魅力的に映る。本書の登場人物たちはもちろんサラリーマンや組織に属して勤務する人たちではなく、文筆業や音楽家イラストレーターや劇団主催者などそれぞれが明日の保証もないフリーランスで糊口をのりする人たちである。

今日何をするか、明日何をするか、自分で決めないといけないプレッシャー。自分もサラリーマンとして、タスク管理してやるべきことを整理してある程度は自分の裁量で仕事をしているが、全て自分ので決める人たちに対する憧れは強い。本書宜しく、病むかもしれないけど。みうらじゅんは本書でこんなことを言っている。

「吉田;自分を騙して何でも面白がっていかないと無理ですよね。

 みうら:自分で体験したことじゃないと無意味だからね。とんでもないことをしでかさない限り、ネタは増えないですよね、やっぱり」

うーむ深い一言。彼は離婚して一番精神的にきつい時にJ-WAVEで仕事でチンポの話ばかりしていたという。ちょうど読んでた水道橋博士の「芸人春秋」にも載ってた一節だけど、「ドーランの下に涙の喜劇人」というポール牧の言葉も重い。これだけの覚悟や誇りをもって仕事出来てる人、あんまり周りにいないよなぁ…。

菊地成孔の言葉も刺さる。

「ある意味、神経症はイニシエーションなき時代のイニシエーションみたいなもので、特に39歳から40歳にかけて普通にきたら皮剥けたぐらいの感じで気楽に考えたほうがいいんじゃないですかね。「一時期、俺も荒れてた時期があってさ」とか、あいいうような通過するものだってイメージ持ってるとだいぶ楽になるし。」

このくらい、自分の負の感情ともきちんと付き合っていけたらと思う。ちなみに彼の場合、欝になってカウンセリングを受けることで自分のクリエイティビティに影響する、トラウマを除去することで枯れてしまうんじゃないかという危惧があったそうだが、意外と欝が晴れてからの方が作品数も増えて、どちらかというと活発になってるのだそうだ。彼の明晰な頭脳に比べると出来のあまりよくない自分ではあるが、見習って辛い時になぜ辛いかをきちんと分析して消化できるようになりたい。

あ、何か仕事論みたいになってきた…。

ついでに、山下達郎の仕事論も貼っておく。音自体も好きだけど、彼の仕事に対する意気込みも好きなのだ。

http://www.asakyu.com/column/?id=1031