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webエンジニアのメモ

ある子供 [DVD]

ある子供 [DVD]

ある子供ってのは赤ちゃんじゃなく主人公ってことで大体まとまってるみたいね。結構面白い映画だと想うんだけど予想外のことも起こらない物語だったかな。そういや「国道20号線」って邦画が最近あったらしいけどこんなストーリーなのかな。カメラと被写体が近いというか、いちいち描写がリアルでその辺はうまいと思う。川で針金を水面でバシャバシャやってたり、泥を靴に塗りつけて壁に足型をつけてるシーンなんかはホント小学生レベルでちょっと笑えるくらい幼稚だ。そんな主人公たちをコーエン兄弟の「ノーカントリー」みたいにほとんどBGMを使わず、自然光で淡々と追っていく。主人公はいわゆるサイコパスといえるような、他者の痛みに対する共感力や想像する力が欠けていて、常にその場しのぎの嘘をつき反省することが出来ない。特に自分の子供に対しては一度も話しかけず目も合わせず、人として認識できていない様子がはっきり出てる。ひとつ気になるポイントとなったのは彼が直接的な暴力を用いないこと。必要があっても盗みやひったくりといった被害者の身体を傷つけないような方法で金を得るし、彼女にキレられても、呆れられても暴力をもって従わせることは無い。この辺からして彼は「チンピラ」ではなく「クソガキ」でしかないことが表されている。自分より強いものからは搾取される。でも真面目に働くことは「バカ」に頭下げることだと思い働こうとしない。物語が進む中で徐々に彼は孤立していくんだけど、なぜ自分がこんな目にあっているのか?を反省し、改めることという選択肢が彼にないので、再三彼女の家に助けを求めていくんだが、それは物理的に金が無い、腹が減ったからというレベルの話でしかない。ラストは結構評価が分かれるみただけど、俺はこれは描き足りてないと思った。確かにああいう涙によって一抹の希望を感じさせる描写は出来るだろうけど、彼は失って自分が本当に大切にしなくてはならないものを学んだ、というより動物的に服役する環境が辛いから泣いている、というようにも読める。彼は反省せず、自分の子を売ろうとした相手(臓器売買でもするんだろうか)に自分の親や彼女がたかられ、更に監獄の上下関係に苦しみ出所した後も働こうにも働けず、また長続きせず前の環境に舞い戻っていくというのがリアルなエンディングになるんじゃないかと思う。彼女の方も彼を信頼しているんじゃなく、気が合うから、一緒に遊んでて楽しいからという惰性で付き合いを続け子供を持ったんだろう。この関係がしっかり壊れてからでないと、彼は人間らしい自立は出来ないと思う。