midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「戦争は女の顔をしていない」を読む。

「同志少女よ、敵を撃て」でも参考にしていたという本作の漫画を見つけたので読んでみた。

timit.hatenablog.com

様々な立場で語られる戦争体験のエピソードが想定していた通りヘビーな内容。身近な人が目の前で殺されたり、殺したり、多くの仲間がいた中で1人だけ生き残ったり、戦争後も辛い生き方を強いられたり、PTSDのような形で死ぬまでその影響から逃れることが出来ない。可愛らしい絵柄であまりにグロい表現はないのだが、画面全体的にトーンが薄くて掠れたような線なのでどことなく悲しさや侘しさが漂う。バンドデシネとかの読者は本作を読んでどんな印象を受けるだろうか?

本当に自分が今どれだけ自由に生きていけてるかを噛み締めることができる。歴史上、自分の住む場所、職業、信仰、家族形成や表現など自分の意思で決められることなんて本当に限られていて、現代ももちろん戦争は起きているし色々な問題は山積みだけど自分自身は「数年後に生きていられるかわからない」というような心境で人生を運営していないので、平和ボケしてるよなと感じる。本作に登場する彼女たちのように「実体験」でない以上は常に戦争をそばに置きつつ生きていくことは出来ないし必要もないとは思うが、きちんと考えながら生きていきたいとは思う。

「lambda実践ガイド」を読む。

Lambdaで簡易な処理を実装する機会が増えたこともあり、改めてサーベーレスを含めてAWSでの簡易的な関数を実行するための仕組みを含めて学べた。API GatewayとLambaとS3やDynamoDBなどを使って簡易なwebアプリを構築する手法を学ぶことができる。Lambdaの実行環境の裏側やLayerなどのライブラリ連携の構成についても解説があり、サーバーを使う運用との差異を学ぶことができた。

また、改めて感じたのは、現場で作ったLambdaは本書の内容を超えているということ。人によっては読み進めてがっかりするかもしれないが、個人的には現場レベルで Event BridgeとLambdaとs3を使って作成した処理は本書のレベルよりも高かった。

「マンガの描き方」を読む。

スコット・マクラウド氏の著作2冊目を読んでみる。

timit.hatenablog.com

前作はかなり「マンガとは何か」とか「何を表現しうるか」みたいな抽象的な解説に比重が置かれていたのに対して、本作ではもっと具体的にストーリーを語るためにマンガ的な文法を使ってどのように表現できるかを論じていて面白い。日本マンガや手塚治虫の仕事にも触れつつ、コマを使って絵と言葉で物語を紡ぐことに対して色んな作例や練習問題をもとに解説しているのが面白い。

本書は映画志望の人もすごくためになると思う。エスタブリッシュ・ショットみたいな言葉が出てくるだけでなく、カメラ位置だったりショットの切り替わりだったり、映すショットと省略するショットの選択だったりとかなり映画の授業を受けている感じ。コマの割り方、キャラクターの表情やボディランゲージなどのマンガ家に求められる技術を通して、読者を夢中にさせるためのストーリーテリングの技法についても解説している。

作劇のため、あえて読者の視線や関心を逸らしたりするミスリードの仕方もマンガで解説していたのが面白かった。マンガ表現として手品をするのだが、吹き出しを使ったセリフと視線を誘導するコマ割りで、読者も騙されるんじゃないだろうか。語ることの奥深さを感じられた。

AWS 継続的セキュリティ実践ガイド」を読む。

AWSを使って構築するシステムについて、セキュリティ系サービスを使ってログの収集/分析する基盤の構築方法を解説する内容。著者はElastic製品に知見があるようで、ログのフォーマットの揃え方とか苦労してきたんだろうなというのが滲み出ていてよかった。全く知らない、使ったことのないサービスはほとんどなかったが、細かい活用方法やSIEM構築あたりは未知の領域だったので楽しく読めた。かなり大規模なサービスではないとここまでしっかりした分析基盤を作るよりも先に機能開発の方が優先されがちだとは思うが、次の次の一手、というくらいの感覚で読むことが出来た。

「マシーンズ・メロディ」を読む。

面白い内容なんだが、史実と物語の切り分けが曖昧でちょっと読みづらさも感じた。あアメリカ産のhouseやtechnoがフランスやヨーロッパでどんなクラブやどんな人に受け入れられていったかという歴史の部分は、割とアメリカ起点で語られがちな物語とも違って面白いのだが、明らかに実在のアーティストをモデルにしてたり実名で登場するキャラクターと架空のアーティストが同じレベルで出てくるのでちょっと判別しづらい。「へー、知らなかったけど当時こんなアーティストがいたんだ」と思って色々検索しても辿れなくて気づくという。架空のアーティストのエピソードでも生々しいからリアルに感じてしまうんだよな。同じ漫画というメディアで例えるなら「るろうに剣心」の剣心と斎藤一のような感じだろうか?

アメリカとフランスで同じ曲の需要のされ方が違うというのもポップカルチャーでよく起きる現象かと思うが、1980年代、90年代のタイムラグのなる文化の伝播の感じが懐かしくもあり楽しめた。

個人的には、KraftwerkNew Orderは本当に偉大だったんだなというのが新鮮だった。両方のアーティスト共に自分はすごいファンという感じではないのだが、彼らのファンであるアーティスト(デトロイトテクノの第一世代や電気グルーヴなど)は自分もファンであるという孫みたいな関係性なのだ。もちろん彼らの全盛期の聴かれ方や熱狂ぶりを体験することは出来ないので今彼らの楽曲を後追いで聴いても当時の空気感は味わえないことはわかるのだが、「こんなかっこいいアーティストを知ってるのは自分だけだ!」みたいなキッズたちがアメリカにもヨーロッパにも一定層いたんだなと思うとなんか微笑ましく思えた。

AWSコスト最適化ガイドブック」を読む。

コストという観点でAWSのサービス構築を解説した本。最適なアーキテクチャを選択するという章についてはある程度実践できてるものの、予防・予測周りの知見や実践が足りないと感じた。特にタグ付けについては監視の有効/無効を判別するために使っているのがほとんどなので、どういう断面でコストを可視化すべきか合意をとった上できちんと付与していった方が良いのかもと感じた。あと、コンピューティングリソースとしてLambdaと並んでApp Runnerを紹介してるのも新鮮だった。まだサービスして成熟しておらず、機能的に制限ある印象であまり実践で使ったことがないのだがFargateとLambdaの中間くらいの感じで今後利用検討しても良いのかもと感じた。

「マンガでわかる地政学」を読む。

マンガでわかる系シリーズで面白そうなテーマだったので読んでみた。読み始めてすぐ若干違和感を覚えたのだが、著者のプロフィール読んで少し納得。出版自体もPHP出版だし、参政党とかと繋がりのある保守的な人のよう。なんか倭寇とか帝国主義時代の日本の侵略行為について妙に評価してたり擁護的なので少し違和感が残った。研究者ではなく講師のようなので、一次資料の収集や調査・研究をするのではなく日本の素晴らしさを伝えたい的な主張が滲み出てる感じだった。

とはいえインドやブラジルの事情の説明とかは知らないことも多くてためになったし、高校生くらいならサクッと読めて楽しめる。