midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「自宅で湿地帯ビオトープ」を読む。

すごく面白かった。我が家のマンションでは実現できていないものの、生物を育てる体験は意識的に増やして行きたいと思った。Gとか蚊みたいな害虫が来ない対策もできるようだし、狭いバルコニーでも環境自体は作れるようなので少しずつ「金で買わずに近辺の生物たちの住みやすい住環境」を作っていきたいと思う。

近隣人民に迷惑をかけず、かつ自分が生きてる環境の生き物たちがどうやって生活できるかを考えるのは、自分の承認欲求などと全く別ベクトルで面白い。

本書を読むと、何気なく歩いている都内の道ですら、公園や戸建て住宅の庭などに生きている生物の動向を面白く思える。自宅の近くにあるラーメン屋の前に大きな水の入った器があって、これって何のために置いてるんだろう?とか長年思っていたのだが覗き込むと生物たちの生きる場が広がっていた楽しかった。自分ももっと近隣の環境に対する感度を上げて楽しく暮らしたい。

「東京芸人水脈史」を読む。

多分ニューヨークのyou tubeで知った「山田ナビスコ」という名前。若手の東京芸人を長年定点観測していたそうでちょっと気になっていた存在だったので本を出したと知って読んでみた。正直、残念な仕上がりだった。

あまり良い評判を聞かないラリー遠田といった批評家としての分析力や、古今東西のコメディ全般の歴史に関する知識や教養がある訳でもなく、あくまでも叩き上げで若手芸人の芸を見続けてきた人、としては真っ当なのかもしれないが、予想よりも文章がかなり緩くエッセイ的だった。分析力だけが取り柄というような自己評価を本文中でしてるけど、だとしたら自分がかつて関わってきた仕事の年月日などの基本的なデータベースはせめて本にする以上は裏取りして事実関係に齟齬がないか押さえておくべきだと思う。ほぼ全編を自分の曖昧な記憶ベースや印象で語っているような文体なので、昭和のスターが書いたどこまで本当か分からない自伝を読んでたり居酒屋の酔っ払いの話を聞いてるような感触がある。本書には写真も図も挿絵も注釈も出典情報もない。芸人および自分の生い立ちや仕事についてゆる〜くエピソードトークを繰り広げるだけという感じで、若干業界に対するダメ出しというか説教感もあるのがきつい。自分との関係性をわかりやすくするため、と冒頭に宣言してはいるものの、芸人やコンビ名にさんを付けてたり略していたりするのもあって何を指しているのかが非常に読みにくい。お笑い関係者だけが読むことを想定しているのか、内輪感が強い。

お笑い理論を持っていてそれに当てはめてネタを分類・分析する、みたいな研究者的な手法も取っている訳ではなさそうで、単純にかつて自分が見たことのあるネタに関する記憶を元に笑いに関する自分の好みで若手のネタにダメ出ししてるらしい。これだったら、you tubeで見たことあるnon styleの石田やパンクブーブーの佐藤といった現役漫才師によるネタ解説とかの方がよっぽど芯を食っていて納得感あるのではと感じた。自分が若手芸人ならあまりこの人を頼りにしないだろうなという。

カニカニレボリューション」を読む。

予想に反して結構壮大な物語だった。絵柄はコントラストのはっきりしたデザイン性の高い明るい色彩が美しく可愛らしい感じで、アメコミ的な絵柄とも日本マンガ的な絵柄とも違って良い。あと、吹き出しが一切登場せず、セリフを「文字と発話者の間に書かれてた紐」だけで表現していたのも画面が広くなって面白いなと感じた。

アクションシーンでは集中線や大胆な構図・アングルと効果音、コマ割りの画面もあっていい感じに楽しめる。それでいて人間の歴史を敷衍するような革命や闘争、生物の進化みたいな話でもあり、エンターテイメント性高くて楽しめた。

「マイク録音が一冊で分かる本」を読む。

相変わらず、宅録DTMもやらないのにこの手の本が面白くて読んでしまう。著者の中村氏はtwitterでの発信も面白いのでフォローしており、単著を出したとのことで読んでみた。実際に本作で紹介されるマイキングで録音されたサンプル音源がsoundcloudで上がっており、聴きながらなるほど、こんな違いが出るのかとタメになるし、自分の好みも確認できて面白い。

soundcloud.com

セルジュ・ゲンズブール」を読む。

正直別に彼については何かフランスでやたらモテ散らかした男というくらいのイメージでファンでもなんでもないのだが、本書を読んでもそのイメージが全く変わらなかったのが面白かった。というか、アル中・ドラッグ中毒でヘビースモーカー、傍若無人でセクハラだらけな言動などクズ男に思えてしまったのだが、まぁ日本で言う昭和のスター的な感じもするので同じようなもんかなという思いもしないでもない。それでも、音楽に映画など制作意欲は結構すごくて、色んなジャンルに目配せして作品を残してるし、後進への影響もすごいようなのでやはりすごい人なんだろうなという感じ。ちょっと気になったのがピーター・トッシュと録音したレゲエ・アルバム。聴いてみた感じも悪くなかった。

形式的にはすごく現代的なバンドデシネという感じで、セリフ回しもそれほど重くないのでスラスラ読めるし、見開きみたいなページだったり、シーンによってはタバコや酒が擬人化されたり、見たいな時折ファンタジックなテイストに移行するし、日本の漫画読みでも読みやすい内容だと思う。

「ダーリンはネトウヨ」を読む。

ほとんど毎週聴いてるサンデーマンガ倶楽部で知った作品。面白かった。

在 Apple Podcasts 上的《サンデーマンガ倶楽部 Sunday Manga Club》:Ep.157『ダーリンはネトウヨ』クー・ジャインを語ろう!

ポッドキャスト内で色々と言われている通り、自分の生きてきた風景でも見られた、悪意がないけど相手を傷つけている言動がリアルに記憶から立ち上がる。少しでも自分と違うであろうバックボーンを持つ人、に対して無意識にしてしまう言動。なるべく先入観をなくして人に対してフラットに接しようと心がけてはいるが、感情はあるので好きな人がいれば嫌いな人もいる。国籍も性別も年齢など色々な属性に関して、「自分とは考えや価値観が違うであろう人」の相手の言動が失礼だったり不快だと感じる時に、どこまでそれを言動として表明していいか迷うこともある。

ダーリンとして語られる彼氏の言動は全然共感できないし、自分が第三者の友人としてその場にいたら、流石に諌めると思えるので安心はするのだが、差別的な言動はあっても彼氏として、先輩として彼女を守ろうとはするし、本作の主人公には許容できなくても我慢してやり過ごす人もいるのかもな、とは思う。

「花束みたいな恋をした」に出てきたセリフで、結婚するか別れるかという場面で「またそうやってハードルを下げるの?」というのを思い出した。お互いが幸せになる上で考えや価値観が合わない部分は確実にあるので、消耗し切る前に別れる選択を出来ればもちろん良いのだが、妥協に妥協を繰り返して結婚して子供を育てて、相手のことが全然理解できないけど戦友みたいな熟年夫婦になるパターンも普通にある。結局は当人同士の関係性なので、自分に出来ることは疲弊することに耐えづらくなったらちゃんと別れるということくらいしかない。

ダブステップ・ディスクガイド」を読む。

去年からアフリカの音楽の面白さや奥深さに惹かれて掘っていて、DJ的に音圧のある音楽としてmixするときにbass、dubstepgrimeあたりの相性が良くて、この辺りも改めて掘ってみようと読んでみた。

読み始めて気づいたけど、本書が出版されて10年も経っているということに驚いた。今読むと若干古く感じる解説もあるが、この辺りの年代の話だとリアルタイムで通過してきてるので、大学生の時にGoth -Tradが凄いらしいみたいな話を聞いたとか、BrialとかJames blakeが出てきた時の盛り上がりは覚えてるし、今も大ファンでもあるshackltonやBok Bok辺りの過去仕事の変遷や当時のシーンの中での位置付けを知れたのもすごくよかった。ただ、どちらかというと2000年代後半〜2010年代前半はHouseやHip Hopなどを軸にしてdiscoやsoulなど生音っぽい音楽や、リアルタイムよりも過去の音楽を掘り進めるのに夢中になっていた感じもあって、あまり「現場」でこれらのアーティストの音楽を体験することがなかった気がする。後半でかつてのDisk Shop Zeroのオーナーである飯島氏がレコード流通という側面からもUKのdubstepシーンについて述べていてすごく面白いのだが、店の存在自体は知っていたけど結局一度も買い物することなかったなと今更だが勿体無いなと思ったりした。ただ、本書でも若干disられ気味に紹介されているが、skrillexだEDMだとギンギン・ギラギラした音楽が最新のdubstepという音楽だみたいな紹介をされていたこともあって、dubstep周囲に関してやや冷めた目線で眺めていた記憶も同時にあった。

それでも、本書を読んで知らなかったアーティストの名前や曲を知ってかなり面白かった。聴き直してみてやはり思うのはdubを背景に持ってる音が好みだなぁということ。リズムパターンが面白いというのは前提として、UK音楽的に雰囲気がダークで冷たかったとしても、煙たかったり、delyやechoでザラザラした感触の音にグッとくる。

そういえば、kode9については思想的に危険かつ面白い人というイメージも持っていたけど、本書のインタビューは結構音楽オタク的で割と趣味合いそうだなという気もした。

timit.hatenablog.com