midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「イット・フォローズ」を観る。

シンプルで美しい低予算ホラー映画。伊藤総氏のレビューで興味を持って観てみた。タイトル通り、ただついてくるモノについての物語。現代のデトロイトを舞台に、10代の若者たちのキラキラした感じと、日常からぬっと顔を出す「それ」が引き起こすバイオレンスなホラーを描く。ターゲットが死ぬまで、超人的な力で淡々と「追って」くるゾンビのような生き物に取りつかれた美少女と、それを追い払うべく協力する友達や恋人たちとの奮闘が見もの。ホラーとしては、スプラッタでもないし幽霊ものでもないんだけど、日常の中に潜む異物になぜか命を狙われるという理不尽さが恐怖の源だったりする。一部、この恐怖の連鎖をエイズの暗喩ではないかと解釈した人達が多かったようだが、作者は明確に否定しているらしい。

自然光を存分に生かした映像はすごく綺麗だし、青春映画のようなのんびり、ダラダラした若者たちの描写がたまらない。ビールを片手にトランプで遊んだり、ソファに寝っ転がりながら動画配信サイトで動画を楽しみつつ、屁をこいて爆笑したりとか。この映画には大人っぽい、理屈や合理的な手段で「それ」を撃退しようとするキャラが登場しない。冒頭でなすすべなく死んでしまう少女に始まり、「もっといい戦い方あっただろ!」と突っ込みたくなるような、アメリカ郊外のティーンたちのぬるま湯日常がある意味最大の本作の魅力なのだ。あやうく死に瀕してさえも彼らは間抜けだし、徹底抗戦しようと奮闘する場面でさえ何かカッコ悪い。でも、そういう姿が「ヴァージン・スーサイズ」のごとくキラキラしてて美しいのが良い。妙に哲学的な詩を読む少女がいたり、「スイミングプール」みたくもったいぶったような水やプールの描写があったり、色んなレベルで楽しめる。ラストシーンも示唆的で、絶体絶命のまま、かつ劇中の中で最も恋愛が成就した場面で終わるという強烈なもの。エッジが利いていて楽しめた。