midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

[野食のススメ 東京自給自足生活]を読む。

面白かった。なんとなく山奥のツリーハウスで自給自足をしながら暮らすというのは憧れの一つであって、映画「リトル・フォレスト」とかも楽しく観れた。けど、本作では都心近郊で、かつ初心者にでも出来る自給自足生活を提唱している。食材の種類は様々で、基本は釣りでタンパク質を摂取しつつ、キノコや木の実に始まり植物、虫やカエルとかも含まれる。作者が自分と同年代ということもあってより興味深く読めた。最近、興味関心が同年代の人に集中しつつあるな…。

著者の、未知のものを食べてみたいという欲求の深さに恐れ入る。人生の関心のほとんどを食べることに費やし、かつ飽くなき探求心で未知の食材を調達して自分で食べつくすというスタイルのグルメはなかなかいないと思う。気軽に野食を初めて欲しいという著者の思いから、初心者にかなり優しく、著者自身はキノコ採りのエキスパートっぽいんだが、毒の有無の判別が難しいキノコは扱わないなど丁寧な作りになっている。また、単純に食料を採取しつくすんじゃなく、きちんと漁業権を守り、幼魚を時にリリースしたり、キノコを少し残して採ったりと乱獲で生態系を壊さないようにしようという考えも随所に出ており、食材たちやプロの水産業者たちとの共生に対する考えも共感できた。

とはいえ、自分にはほとんど実技的な採取は未経験なので、「本書を片手に」森や川、海を散策しないと自給自足なんて送れそうにないなと思う。本書でさらに参照されている本が便利そうではあったけど。

そして、四季折々の自然から、自分が生きていけるだけの食料を調達することなんて訳ないんだなーと思ったりした。この辺は、段ボールを寝処として、「都市の幸」としてゴミから生計を立てる生き方をした坂口恭平みたいな考え方とも呼応する面白い視点だと思う。実は視点を変えれば人間生き方なんて選べるんだというね。