「ゴッド・ガン」を読む。
これも山形浩生が勧めていた一冊。ワンアイデア・ワン小説的な感じがあって楽しかった。星新一の感触に近いものがあるかも。あんま大ヒット作品はなかったみたいだけど、「SF界のボルヘス」的な異名を持つ短編が得意なイギリスのSF作家の短編集。タイトル作の「ゴッド・ガン」は、物理的に・科学的に神を殺す科学者を描いた作品。面白かったけどちょっとインパクトが薄かった。
面白かったものを挙げると、「ロモー博士の島」がちょっとLBGT的なテーマを扱っていて現代的で印象に残った。ウェルズのパロディらしいけど、知らなくても全然面白い。性(や性対象)を一時的に交換できる社会の可能性の断片を描いている。あと、「大きな音」はそのままタイトル通りで笑えた。6000人のオーケストラによる、最も大きな音楽を奏でようという試み。全員が鼓膜が破れてるとかいう指揮者の話で笑った。後は、「ブレイン・レース」も面白かった。異星人というか、コミュニケーションできそうでできない他者を描いたブラックコメディ。一見礼儀正しそうな異星人と触れあった地球人が無残な目に合うというお話(かつ、異星人側にはそんな意識が全くないのがポイント)。何か、描写のえげつさも込みで冨樫の「レベルE」の一話に入ってそうな感じで、小説ではあるけど絵面が笑えた。