midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「いちえふ」を読む。

tsutayaマンガレンタルにて。これも、「このマンガがすごい」で知ってはいて、たまに連載中は雑誌で立ち読みしていたりはしたんだけど、まとめて読むのは今回が初めて。面白かった。

世界を緊張させた福島原発地震後の後処理を描いたとあって、さすがにセンシティブすぎる題材だけに、政治的な要素やイデオロギーがどうのっていうのがどうしても前面に出がちな感じはあるんだけど、そういう要素が全くない、淡々とした描写が面白い。「刑務所の中」的な、ちょっと異質な職場に飛び込んでみました、的なノリと言ってよい。原発を肯定も否定もしない。実際、本書の中でも新しく作業に加わった人間とちょっとそういう論争に繋がりそうな一幕があるも、お互い自分の職務を全うするために矛を収める場面があったりする。そして、何が正解か分からないまま、汚染を防ぎながら少しずつ除染作業を進めるために日々工夫し、毎日の被ばく量を計測し一喜一憂する、どこにでもいる労働者の姿がそこにある。翻訳されて海外にも読まれているというが、どんな感想を持つだろうか。原発反対派からは、「原発に対して無批判だ」と言われるかもしれないし、推進派からは「もっと原発が厳正な管理下であることをアピールしろ」と言われるかもしれない。実際、現場の作業員も本作を読んでいる人もいるらしい。しかし、匿名を貫いてこの現場を描く作者には、外野の圧力に屈せず、表現の自由に基づいて好きなように書いて欲しいな、と思ってしまう。被ばく量の関係もあるし、もう作者自身が現場作業にいくことはないかもしれないが、貴重なルポとして残される傑作だと思う。