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「ストレイト・アウタ・コンプトン」を観る。

ストレイト・アウタ・コンプトン

むちゃくちゃ良かった。話の筋としては「ジャージーボーイズ」とちょっとかぶるけど、政治的、音楽史的に与えた影響が桁違いなのでこっちの方が断然面白い。元祖ギャングスタラップといってもいいＮ.Ｗ.Ａの結成前夜から大成功し、金銭関係による不和で分裂していくまでを描く。

今は亡きEASY-Eを除いて、当時の関係者たちがそろい踏みになって作成した映画ということで、かなりオフィシャルで自伝的な要素が大きいのはポイント。なぜなら、メンバー間格差が激しいグループものの常というか、今や大成功したIce cubeとDr.dreの視点だけで映画を作成してしまうとMC RENやDJ YELLAの言い分が弱くなってしまうし、各々忘れたい過去もあるだろうけど、一応メンバーみんなが本作を認めたというだけでかなり大きい。

そして、ICE CUBEのような実の息子が親を演じてる場合を除いても、登場人物たちがみなそっくりで驚いた。主要なＮ.Ｗ.Ａはもとより、個人的には、DEATH LOWに移籍してから登場するsnoop dog役の役者さんが良かった。劇中のシビアで緊張感あふれるやり取りを覆すようなふにゃふにゃでゆるーいラップをかましてくれる(しかもフロウまで似てる)仕事ぶりには見事というしかない。2pac役の人も雰囲気は出てたけど、snoopに軍配。

物語については、とりあえずICE CUBEとDR.DREについてはイメージ通りな描き方だなぁという感じだった。ICE CUBEはギャングではないけど、巧みなストーリーテラーでDR.DREはクレヴァーな音楽オタクという。一番印象が変わったのが実質主人公といってもいいEASY-E。正直、彼はどちらかというと、本作にも出てきて対立するSuge Knightのような「アーティストというよりヤクザ(音楽よりも金が第一)」なイメージがあったので、こんな男気あふれるカリスマ的なリーダーだとは知らなかった。一時は対立していた元メンバーが作る映画がこれなんだから、ダーティなイメージよりも仲間思いの男ということで皆の見解が一致してるのだろう。冒頭のハスリングの取引シーンからしてスリリングで、メンバ

ーの誰よりも危険な橋を渡って生きてきたことが分かる。ICE CUBEとDR.DREが抜けてからのレーベル全体の荒廃感が良くて、グループに対して良かれと思ってやってるのにうまくいかないジレンマで、観ていて感情移入してしまいEASY-Eにのめりこんでしまった。前述の「ジャージーボーイズ」だと、紆余曲折を経てもなんだかんだ再結成するという大団円を迎えるけど、本作では再結成目前にしてEASY-Eの死を迎えてしまうというのが切ない。

もちろん、音楽映画ということもあって音楽は豪華。Ｎ.Ｗ.Ａの曲はもとより、その前夜祭として描かれるWCWCがDJ中に流してるready for the worldのlove you downとか、レコーディング中の2pacに聞かせるCalifornia Loveとか名曲揃い。あと、やはり代表曲であるFuck the policeについてはLAPDによる理不尽かつ不愉快極まりない職質を受けた後に作られており、胸がすくような思いで楽しめた。