midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「バードマン あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡」を観る。

早稲田松竹にて。前評判通り面白かった。確かにこれは凄い。一緒に観た「セッション」よりも面白かった。全編ワンカットでシームレスに撮っているように見える演出も凄いし(大好きな「ゼロ・グラビティ」の撮影監督らしい)、ミッキー・ロークの演じた「レスラー」宜しく、80年代のスーパーヒーロー「バードマン」を演じた過去の栄光から何とか脱皮しようともがき、必死に新たな舞台の仕事を成功させようと(かつ家族との関係性の修復に)奮闘する(けど空振りしちゃったり)不器用な男の姿が悲哀に満ちていて共感できるし、笑いにまで昇華しているのはお見事。パンツ一丁でNYの街頭を走る姿は特に笑えた。

いわゆるメタ構造になっており、物語中でレイモンド・カーヴァーの短編の舞台を何度も繰り返し、劇中の妻を男に寝取られる役と主人公の境遇をダブらせ、最後には劇中の自殺シーンで、実弾で自分の体を打ち抜いて虚構と(映画世界の中での)現実を破らせている構成も旨い。ラストシーンは解釈を観客に委ねる形となっているが、最終的には仕事も家庭も再建し、きちんとハッピーエンドとなっている(と個人的には解釈した)点も良い。

脇役も良くて、演技力は確かながら素行の悪いお調子者のエドワード・ノートンがいい仕事してたし、そのエドワード・ノートンとちょっといい感じになる娘役のエマ・ストーンが小生意気な感じでそれでいてしっかり父親を案じていて可愛くてすごく良かった。批評家役の女性も知的で辛辣ながら重要な役どころであり、「あなたは俳優じゃない、有名人よ」という一言も強烈で心に残る。

タイトルの意味はラストシーンになって分かるのだけど、納得感があってとても印象に残る。あと、劇中の音楽はほぼドラムのみで演奏され、上手く緊張感や高揚感を表現しており、たまたまだけど一緒に観た「セッション」と通じる部分もあって面白かった。