midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「新しき世界」を観る。

結構前評判良かったんで期待して観たんだけど、うーん、おしいなぁ。映像は光度を抑えた感じというか乾いた感じでとてもスタイリッシュだし、登場人物たちのスーツの着こなしや所作も痺れるようなカッコよさがある。かつ物語はつまらなくはないけど、主人公に魅力がないので、わきを固める癖も魅力もある人物たちが浮かばれないというか。ヤクザに潜入捜査する華僑系の警察官がヤクザ社会の忠義と警察官としての使命に右往左往するという話。骨格はジョニー・デップの「フェイク」と同じなので、そっからどう違いを見せつけられるかという点に注意して観てた。

本作の一番の面白さが、「フェイク」と違って主人公が最終的にヤクザ社会で生きることを選択することだろう。自分の素性を知る一部の上司たちを皆殺しにし、組織のボスになったラストシーン、煙草をくゆらせながら椅子に座る彼の姿はカッコいいんだけど、彼自身の行った劇中の選択ってそのくらいなんだよなぁ。ヤクザとしての有能さが描かれず、兄貴分のヤクザ(痩せた貴乃花に似てる陽気なおっちゃん)にいじられて終始オロオロして、無茶ばっかり言ってくる自分の上司や同僚の女性警察官には怒りをあらわに切れまくるという様を観てると(共感は出来るんだけど)、なんでこの人ヤクザ社会で出世できたんだろうと訝しむばかり。見た目も大泉洋みたいな顔で、全然威厳が感じられないし…。ひたすら悪さを醸し出してる兄貴分のヤクザ(とそのライバルのヤクザ)の方が熱いし濃いしギラギラしててかっこいいんだよなぁ。彼らが死んだことで主人公はとんとん拍子に出世するんだけど、なんだか味気ない感じ。主人公役がもっと往年の原田芳雄とか松田優作みたいな野獣臭する役者さんだったらもっと面白くなった気がするんだけどなぁ。