midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「グローバリゼーションと音楽文化」を読む。

日本でのラップミュージックを実践する過程を、ラッパーやレコード会社、イベントのスポンサーなど様々なプレイヤに対する詳細なインタビューと、デュルケムの文化資本に関する議論などを下敷きにしながら論じていく良書。あとがきにも触れられているが、音楽自体の快楽性はほとんど語られず、「外堀を埋めるような」書き方をしているが、それによって単なる印象論に終わらない面白い研究になっていると思う。

人種や国境を越えた文化的な共同体=「シーン」といった、感覚的に使っている言葉の定義を説明されることで「あ、確かに」と腑に落ちるような経験が多く、もやっとしてた理解が少し開けるような読書体験だった。

ゲットーで発祥したラップという文化を、日本で生まれ日本語を話し日本で生活する人間がいかに、サルマネやワックでない「ホンモノ」として実践できるかというラッパーの思考が感覚的に理解できる。日本ではアメリカのように明確な貧困や人種差別といった軋轢が存在するわけではないが、精神的にマイノリティとして抑圧された人間の受け皿としてこの文化が機能している面は否定できない、という旨のライムスター宇多丸の言葉は非常に共感。

何より、インタビューイーとの距離の近さから、著者自身がこのシーンに一定の関わりを持っていて、直接それぞれの対象に対する価値評価はしないけれども、研究者然とせずにこの文化を愛するパッションが伝わるのが良かった。

ちなみに最近聴いた素敵なヒプホプ

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