midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

久しぶりに映画2連発。

ツタヤの宅配サービスを始めて利用してみたけど、これかなり使えるな。

最近データで持ってる映画が見る気しなくてもてあましてたんだけど、今後はこれちょいちょい使っていきたい。現地で探すのは時間と労力がかかる分、探す気のなかった作品とかその場の人の様子とか観察できるメリットもあるんだけど、ネットなら店舗にはあんま置いてなさそうなちょっとカルトな映画も予約すれば探す手間なく借りれるし、返す時についでに何か借りなきゃ…って永遠にはまることを無くせるのでいいかも。

んで一本目は「ヒューマン・ネイチャー」とかが面白かったチャーリー・カウフマンの「アダプテーション」。

アダプテーション DTSエディション [DVD]

アダプテーション DTSエディション [DVD]

ストーリーは、そこそこ売れてるけどハゲ・デブで自己嫌悪で喪男の脚本家カウフマンが脚本をしにくいドラマ性のない作品の脚本の仕事を任され、うだうだ出来ねえよと言ってる内に大きな事件に巻き込まれるも九死に一生を得て、何とか日常に帰りそれまで好きだった編集者さんに告白して一歩前進するというもの。

とりあえず、「共感して楽しめそう」な作品だと思って見たけど、やっぱ共感してしまって困る。喪男の思考回路は西洋問わないね。森見登美彦太陽の塔」、ドストエフスキー地下室の手記」、滝本竜彦超人計画」…まあ上げていけばきりがないけど、自分をひとかどの人間だと思い込みたいのに実際そうじゃなくてそれを認められない弱い男が苦悩するという話は、やっぱり「あるある」と思うネタが多くて自虐的に楽しめちゃうんだよな。現実のカウフマンは普通に妻子もあって売れっ子だから伊集院光みたいなポジションなのかもしれんが、ただ、喪男の物語は今後も生産されてくだろうけどやっぱりこの作品は面白い。

時間軸も物語られる物語のレベルもバラバラでそれぞれが立体的に絡み合って物語を浮かびかがらせてるのは脚本家の技量だし、それに俳優たちの演技もうまく答えてて、さらに「ハリウッド的な」映画を劇中でバカにしながら「その劇自体が」ハリウッド的な展開を見せていき、自らなぞることで嗤うという含みまで持たせてる。あと、個人的に出てくる女の人が皆美人さんで良かった。原作者のメリルストリープはともかく(笑)、編集者の人も弟のガールフレンドも良かったけど、何よりファーストフード店で働いてるランが好きな店員さんがめちゃくちゃかわいかった。カウフマンと一緒にしっかり妄想したわ。

次は「好きな監督」の一人と言っていいだろうガス・ヴァン・サントの「パラノイド・パーク」。前作のエレファントを思わせる説明的な情報の少ない映画で(その分映像自体の情報量は多いのだが)、映画というか叙情映像みたいな感じだ。

パラノイドパーク [DVD]

パラノイドパーク [DVD]

ストーリーは一言で言えば誤って人を殺しちゃった少年がそれを隠そうとするけど、不安や周りの人への対応が微妙にぎこちなくてその機微を楽しもう、という内容。これも時間軸がバラバラになってるので同じカットが二回出てきたりする作りになってる上、スケーターたちの日常風景の粒子の粗い映像が断片的に挟み込まれるため前後のつながりが薄く、そのため話に抑揚もなく結末もあっさりしてるためあまり「物語」的でない作品になってる。

主人公のゲイブ・ネヴァンスくんはすさまじい美少年だが(ヴェニスに死すのビヨルン・アンドルセン的な気品のある美しさとは違う、子犬みたいな顔した女の子みたいな美しさだ)、ほとんど表情がないし、事件の前後で微妙~に行動が変わるんだけど友達の中で気づくのは彼女でもないちょっとニキビ顔の女友達だけだ。彼の行動は観客の共感を得るようで微妙に外していて、後先考えない少年っぽい理解不能さと平穏な日常に着地しようとしてる部分と親や弟、また彼女への影響も一応考えておく優しさなんかを淡々と見ていくだけの映画といってもいいかもしれない。

ただ、ファッションも良いし雰囲気もいいんだけど最後にとった行動はどうかなー。物語として何も締まらないまま終わっちゃたしな。フィクションに「その後」を考えてもしょうがないけど、恐らくいずれ彼は捕まるだろうし、両親にも友達にも知られるだろうから、その時の彼の顔こそ見てみたかったな。