midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「ムーンライト」を観る。

面白かったけど、あまりにも前評判が高く期待していたので、それと比べると普通かなという感じ。マイアミで貧しい母子家庭に暮らす内気な少年が紆余曲折ありながら成長し、束の間の安らぎを得るお話。キャストはジャネルモネイを除いてほとんど知らない人だった。

映像はタイトルにもなっている月明かりに青く照らされる少年や海で泳ぐシーンを始めとしてとても美しく、すごく静かで情緒的で繊細な心の機微を映し出していて、何か日本映画っぽい湿っぽさがある。何か主人公の余りの卑屈さとうまく立ち回れない不器用さいうか、降りかかる苦難への無抵抗さに共感しづらいキャラだなぁと思ってたんだけど、観終わって色々と批評を読んでたら、抵抗できない境遇に生まれ育ってしまった哀しみがある的なものを読んで、なるほどなーと思った。背が小さく皆から虐められ、成長してもガリガリで、母親からドラッグ代をせびられたり、常に抑圧された環境で声を挙げることが出来なかったと。正直、主人公はもっとまともな成長を遂げることも出来たと思う。小さいころから彼の話に耳を傾けようとしてくれる大人もいたし、何も言わず食事や寝場所を提供してくれる優しい人もいたし、何より愛する人もいたのに、それらを捨てて自分の母親を、そして間接的に自分を苦しめてきたドラッグの売人として成功してしまうという。もっと効率良く自分を虐めてきた奴に制裁を加えたり母親を助けることも出来たはずなのに。この選べるはずの選択肢を選べないというのが貧しさなのかなーと唸ってしまう。

本作では若干テーマがかぶる「ブロークバック・マウンテン」のような激しいラブシーンもないし、二人の男性の愛し合い方もとても淡泊である。まるで、男性同士で愛しあう術を知らず、気持ちだけが先走ってるみたいな感じだ。全てが不器用で人間的なのだ。

主人公を演じた3人は全く外見が違うにも関わらず、不器用で内気な感じが透けて見えてとても上手かった。特に、何かを言いかけて黙ってしまう、みたいな癖が良い。他には、ジャネルモネイが聖母のような優しく美しかったのが印象的だった。